か「予予」
(【予予(かねがね)】
ずっと以前から。
かねて。まえまえから。)
(※過去及びマネ捏造)
「……帝光やべーなオイ」
「ちょっと宮地うっさい、来年ウチもキセキの世代獲得狙ってんだからちゃんと試合見てて」
マネージャーに引っ張られて全中の試合を観戦しに来たのはいいが。
キセキの世代、ってのを目の当たりにしてぶっちゃけ笑いしか出てこなかった。
なんだあの常識はずれな連中共は。
あんな奴らと、来年はぶち当たんのかと思うとほんとに笑うしかない。その前に、オレはスタメンに選ばれんのが先だけど。
「相手の方、あきらめちゃったのかしら……」
ふと考えを遮るように聞こえたマネの声に意識をコートへ戻せば、恐ろしいほどの点差と、覇気の消えた相手チームの選手たちの様子が目に入った。
そりゃ確かにこんだけ点が開けばな、と思うと同時に最後までやりきれよと憤りも感じる。
だけど不意に違和感を感じて、もう一度コートをよく見つめた。
「……アイツ、」
「え?だれ?」
「ほら、PGのヤツ」
「帝光のPGって言ったら赤司君じゃない」
「ちげーよバカ、相手チームの」
黒髪の選手。
アイツ、まだ目が死んでない。
「あのねぇ宮地、キセキの世代以外は……」
言いかけたマネも何かに気づいたらしい。言葉を止めてそいつを目で追う。
その選手がチームメイトに何かしらの声をかけると、死にかけてた奴らの目に僅かな覇気が戻っていく。
決して最初ほどじゃないけど感じられる確かなやる気。諦めるな、という意志。
結局、大差は縮まることはなく試合は帝光のボロ勝ちだったが、悔しさに顔を歪めるそいつの姿がやけに印象に残った。
そして巡った春。
何の因果かあのとき対峙したキセキのひとりとそいつはオレの前で再会した。
「宮地サーン!」
「あー?なんだよ高尾、今日もヘラヘラしてんなオマエは」
「ちょ、ヒドッ!」
あのときのことなんてまるで嘘のように、コイツはいつも笑っている。
だけど、その目の奥に常に携える光の強さは変わらず、いつからかそれに惹き付けられるようになっていたなんて。
(オマエはいっこも知らないんだろうけど)
(13/3/6)
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[mokuji]