た「高高」


(【高高(たかだか)】
めだって高いようす。
声を高くはりあげるようす。)








「しーんちゃああぁ」

「喧しい。そんなに声を張らずとも聞こえるのだよ」

「あだっ」





部活の自主練中、何故かオレの方へと近づいて来た高尾に何事かと振り返れば。
突然至近距離で名前を呼ぼうとするものだから咄嗟にその主張の激しいデコを叩いてやった。
いつもながら行動の理解出来ないヤツだ。





「もー叩くことないじゃん」

「オマエが声を張り上げたりするからだろう」

「いや、ね、オレの存在を目立たせてこーかと思って」

「??意味が分からん」





一言告げると、バタバタと体育館の端まで駆けていく。残っているのはもう高尾とオレだけで、やたらコートが広く見えた。

オレが向かっていたゴールとは真逆の位置に止まった高尾が、此方を見てニッコリと笑う。

すうっ、と。
息を吸い込むのが遠目にも分かった。





「しーんちゃぁーーん!!!」

「なっ……声がデカすぎるのだよ高尾!!」





いくら部員がもう居ないとはいえ、下手すれば体育館の外にまで聞こえかねない大声に思わず叫び返す。
当人は何が楽しいのかケラケラと笑い転げている。

訳がわからないままに立ち竦んでいれば、笑いが収まったのか高尾が此方へと戻って来た。





「あーウケたー真ちゃん焦りすぎっしょ」

「何がしたいのだよオマエは……」





尋ねればいつもの笑顔が返ってくる。





「あんだけ声出せば、オレがどこにいても見つけられるだろ?」

「……っ」

「オレは真ちゃんがどこにいても見つけられる自信あるけど。……なーんてな」





コイツは、どこまでふざけているのか。





「……真ちゃん。見失ったらヤだかんな?」





そっと重なった手を強く握り返せば。
高尾はくしゃりと笑った。








(不安なんか外へ飛ばしてしまえ)



(13/3/3)



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