青峰にナンパされる







この寒さなんなの。



オフに一日家に籠ってんのもあれだしと外に出てきたけど、こんなに寒いなら大人しくしてりゃよかった。

顔面に当たる冷気を少しでも和らげようとマフラーに顔を埋める。
季節は春に向かってて暦はもうすぐ3月に突入しようっていうのに最近の寒さときたら。まだまだ冬を終わらせるつもりはないと言わんばかりだ。





「うう〜っ、さっみい……!!」





思わず近くのコンビニに逃げ込んで寒さを一時凌ぐ。

適当に漫画雑誌でも立ち読もうとしたら、ふと黄瀬くんが表紙のファッション誌が目に入った。
何の気なしに手に取ってパラパラ捲ってたら。





「オマエもそういうの見るんだな」

「へっ?」





不意に手元が暗くなったと思えば真後ろに大きな壁。じゃなくて。





「青峰!?」





見た感じ同じ外をうろついてたとは思えないくらい軽装の青峰がオレの手元を覗き込んでいた。
「あ、黄瀬」とか暢気に呟いてるけど、なあ、なんか近くね?
よく見たらマフラーも手袋もしてない。

寒くねーのかなコイツ子供体温か?とか考えながらまじまじと見上げてたら、端正な眉がぐぐっと寄った。





「何だよ」

「いやそれオレの台詞じゃね?なにしてんの?」

「オレはコレ買うのにコンビニハシゴしてた」

「まじか」





ガサ、と手に持っていたコンビニ袋を掲げてみせる青峰。
中には見覚えのあるグラビア雑誌が透けて見えた。オマエそれ。本気のファンじゃんそれ。





「オマエは?」

「え、オレ?オレはブラついてただけ」

「ヒマな奴だな」

「はははとりあえず殴っていーい?」





真顔で告げた青峰はたぶん素だ。悪気はないんだと思う。





「高尾。ヒマなら付き合え」

「は??」





突然何かを思いついたようにオレの手首を掴んだ青峰の手は予想以上にあったかくて、やっぱ子供体温かとぼんやり考えてるうちに極寒の屋外へと連れ出される。





「ちょ、何?寒いんだけど、そと……!!」

「ホントは今日、黄瀬とバスケする予定だったんだけどよ。モデルの仕事とかでダメになったらしいから、オマエ付き合えよ」

「はぁぁ?なんでオフの日にわざわざクソ寒い空の下で青峰とバスケしなきゃなんねえの」

「大丈夫だって、」





振り返った青峰は不敵に微笑んで。





「すぐに熱くなっから」





内容が内容じゃなければフツーにカッコイイんだろうけど。
内容が内容なだけに、ただのバスケバカだわ。



結局、イエスの答えしか持ってないオレも似たようなもんか。








(あああ…!なんで高尾っちがぁあぁぁ!!!?)
(あれ?黄瀬くん仕事じゃ)
(早く終わったし帰り道だったから覗いてみたら…!!青峰っちどういうことっスかこれは…!!)
(たまたま会ったからナンパした)
(えぇぇぇ?!!!)



(13/2/25)




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