どうしてこうなった。
遅れてきた反抗期ならぬ成長期ってか。
高校時代にはオレの方がデカかったはずなのに。
何故か高校卒業して、専門卒業して、二年越しに京都で再会した赤司はオレの身長をゆうに越え、他のキセキばりの背丈になっていた。
「え、うそ、まじで?」
「……不思議な感覚だな、前まではあんなに視点が近かったのに」
「ちょ、赤司、いま何センチ?!」
「188」
「ぎゃー!!ウソだろー!!」
黄瀬くんといい勝負じゃねーか!
成長期遅すぎねえ?!詐欺だろ!
あと足長いですね!!!
「和成の……旋毛が見える……」
「ちょっ、ヤメテ?!何か恥部を見られてる勢いでハズイからヤメテ!」
「キスもボクが屈まないといけないな。……ああ、でも」
「……ッ」
不意に陰が落ちて、額に柔らかいものが触れた。
“それ”がなにかをすぐに理解して体が一気に熱を帯びる。
「額には、し易い」
囁くように告げて、赤司が微笑んだ。
あまりのイケメンっぷりに二の句が告げない。
「……これは、悪くないな」
「えっ、ちょっ、まっ」
ちゅっ、とリップ音がして、またデコにキスされる。
なんの羞恥プレイなのこれやめて恥ずかしくて死ねるの意味を込めて赤司を見上げるけど返ってくるのはやっぱり余裕の笑みで。
笑みを絶やさないままに、数を重ねてく額へのキス。
もう諦めたオレはぐっと強めに赤司と向き合って(といっても意図せず視点は高くなってしまうのは仕方ない)さっきからろくな仕事をしてない自身の唇を何とか動かした。
「赤司」
「ん……どうした?」
「どーせなら、口にしてもらえませんかね……?」
「……っ、」
ルビーみたいな煌めく瞳が瞬いて、そのあとすぐに、柔らかい色に包まれる。
ふわりと、赤司を纏う空気がさっきより和らいだのが分かった。
何か、物理的に見下ろされるのも赤司なら悪くねーかな、なんて。
弧を描いた唇に、赤司のそれが重なるのは。
すぐあとのハナシ。
(お前になら喜んで、唇を捧げよう)
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