(※緑間サン妹&ママがでてきます)





『先日のラッキーアイテムだったサボテンに花が咲いたのだよ』





いつもの日課。
兄さんからのメールにソファで寛ぎながら返信する。
私の兄、緑間真太郎。
大学に入学してからはずっと一人暮らしをしているのだけど、お互いに日々の些細な出来事などを小まめにやり取りしている。
今はもう就職して忙しいと思うのにこうして欠かさずメールをくれる兄さんは本当に真面目。
そしてそんな兄さんが私は大好きである。





「お仕事お疲れ様、です。今日は友人と、抹茶パフェを食べに行きましたよ……と」





写真を添付して、送信。
ほっこり満たされた気分でほうじ茶を啜っていると、リビングに母さんがやって来てテレビをつけた。
ぼんやり横目に見つつふと浮かんだ疑問が口をついて出る。





「そういえば兄さんって……料理が苦手だったように思うけど、食生活なんかは大丈夫なのかしら?」

「ええ。真太郎のこと、ちゃんと見てくれている子がいるから心配いらないと思うわ」

「え、……えっ?」





いつになく柔らかい笑みでとんでもない発言をした母さんに視線を送るけれどそれを気にする様子は全くない。ホットミルクを持って私の横に腰掛けた。こういうマイペースな所は本当に兄さんがよく似ている。





「ふふ、そういえば以前貴女……新しい兄弟なんかが出来たらステキね、って言っていたわねぇ」

「ええと……確かにそんな話はしていたけれど、ね?母さん……あれは、」

「真太郎にそのこと、メールしてみたらどうかしら?」





絶妙なタイミングで兄さんからの返信。
笑顔のままの母さんを気にしつつ、私は兄さんへの新規メールを作成した。





『兄さん、今母さんと話していたのだけれど、私にお姉さんがいたら素敵だと思いませんか?』





鈍感な兄さんにこれで伝わるのか正直不安ではあったけれど、一先ず。そのメールを送信する。





◇◇◇◇◇





「……これは、……どういう意味なのだよ……」

「んぁ?真ちゃん何か言った?」

「ああ……」

「いつもの妹チャンからのメールだろ?なに?彼氏でも出来たって??」





テーブルに遅めの食事を並べている高尾に妹からのメールを見せた。
ディスプレイを向けられた瞬間「え、妹チャンのメールをオレが勝手に見ちゃマズイっしょ」と目を反らすから「アイツにはオレから言っておく、いいから見ろ」とケータイをそのまま渡す。
戸惑いながらも受け取った高尾は、今度こそ顔をひきつらせる。





「……真ちゃん、……あのー…オレの立場上ひじょーに言いにくいんだけどね?」

「何だ?」

「これ、たぶん、つまり……真ちゃんが結婚したいと思う相手の存在なんかを聴かれちゃってんじゃないの??」

「……?」

「いやだから、要は彼女いないの?結婚しないの?って聴かれてると思うよ」

「……は?そんなことか?」





そんなもの、聴くまでもないだろう。
そう言い掛けてふと笑みがこぼれた。
いつから、この光景が当たり前のようになっていたのか。





「高尾」

「へ?」




カシャッ





「え、ええええ?ちょ、なに今撮ったの?」

「高尾、このオムライスにいつものは描かないのか?」

「あ、いや…?描くつもりだったけど……真ちゃんケチャップ取ってよ」

「ああ」





訝しげに此方を見る高尾だが、オレが何も言わないのを見るといつものようにさらさらとオムライスにらくがきを始めた。





カシャッ





「おおおお?!ちょっ、さっきから何なの??」

「ふっ、気にするほどの事でもないのだよ」





身を乗り出してくる高尾の頭を撫で諌めると、オレは少し考えてから、妹へと返信した。





◇◇◇◇◇





「か、……母さん…………」

「ふふ、どうしたの?」





兄さんからの返信にはいつものように写真が添付されていて、そこに写っていたのは、見覚えのありすぎる男性の姿。

清潔感のある白いシャツにボルドーカラーのエプロンを着こなす黒髪のお兄さん。





『姉の代わりに、兄は欲しくないか?』





「……っ高尾さんじゃぁ、反対する理由がないじゃない……」

「高尾くんって良い子よね、料理も上手だし。ほら見て、オムライスに真太郎の似顔絵〜可愛いわね〜」

「というか、母さん知ってたの?!!」

「ええ。高校からのお付き合いだもの、ほんとうに仲良しさんなんだから」

「しかもかなり前から!!!!!」








(そうしてこの日。私に新しいお兄さんが出来ました)






















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