大学卒業して、就職して。
一般企業に勤めるオレと、病院勤務な真ちゃんじゃ生活リズムも違うくて。なかなか一緒の時間って取れないんだよね。
たまの休日。そんな話をマンションの隣人である黒子としてたら、ほんとに分かるか分かんないか程度に眉を潜めた黒子が尋ねてきた。
「不安になることはありませんか?」
「ん?」
「ボクは仕事上一般的な職種の方とは異なる生活サイクルで生きています。そして、その事でよく擦れ違ってしまうので」
「ああ、黒子は小説家さんだもんなぁ」
相手が誰か聴くまでもなく、そりゃ同棲してても顔合わせる時間も愛し合う時間も限られてくるよな。
オレらんとこより大変そう。
「幸い、此方は女性と会う機会に恵まれない職業なのですが……相手は違いますし、緑間君もそうでしょう?」
「そうねー。素敵な白衣の天使チャン達なんかと飲み会とかしちゃったりねー」
そういった話はよく聞く。
学生時代に比べ格段にコミュ力の上がった真ちゃんは「仕事のオツキアイ」には参加するようになった。
けど。
「けど、不安にはなんねーかな」
「そうなんですか?」
キョトンと見上げてくる空色の瞳に、こんな良いやつを不安にさせるとかアイツ、後で怒ってやんないとな。とか考えながら笑ってみせた。
「それこそ、昔のオレだったら不安になったかもしんないけど……」
今はさ、ほら。
「アイツが一番好きなのは、オレだって知ってるから」
そう。笑っていられるくらい。
愛されてるんだって、知ってるからだよ。
きっとそっちも同じと思うんだけど。
そこは言葉にせずにいたら「のろけですか……」と蔑んだ目を向けられた。
「仕方ねーな!そんな不安でいっぱいな黒子にオレの必殺技を授けよう!」
「その必殺技という言葉のセレクトで更に不安が増幅します」
疑いの眼差しな黒子に満面の笑みを送る。
大丈夫。
絶対上手くいくって。
(真ちゃん、おかえ(……ただいま)
(はいはい、おかえりなさいのぎゅー)
(…………今日は何かイイコトがあったのか?)
(ふふふ、一組の迷えるカップルを救ったのだよ)
(???)
(帰ってきたら、笑顔で「おかえり!」これ出来るときだけやったげたらいいよ)
(その内、帰って来て顔見た瞬間抱きしめてくれるようになるから!)