「完全に、バレているのだよ」
「でしょうね」
ぱきっ、と。
黒子の食べていたクランチチョコが音を立てた。
現在駅前にオープンしたカフェに来ているわけだが、何がバレているってあれだよ。オレが真ちゃんとの記念すべきお付き合い一周年おめでとう祝いのために用意したあれやらこれやら、がだよ!
「何でバレたんだろうオレ超考えてプレゼントとか料理とかお泊まりとか色々計画立ててたんだけど、それ全部バレてるんだけど」
「高尾君、意外と分かりやすいですから」
「まじかよ。オレ結構読まれにくい性格だと思ってたわ今の今まで」
「そうなんですか……」
え。かわいそうな顔されるとこなの。
ホワイトモカをマドラーでくるくるしながら、黒子は読めない瞳でこっちを見つめている。
「あーあー……張りきってたのになー、残念だわー、ほんと残念だわー」
「残念感がヒシヒシと伝わってくる発言の覇気のなさですね」
「もーいっかなー、何もしなくてもー。どうせバレてるしなー」
「高尾君が記念日を放棄しそうですけど、緑間君」
「……そもそもなぜここに黒子がいるのだよ」
不満そうに眉を寄せる真ちゃんだけど、たぶんオレも似たような表情をしていると思う。
三人掛けのテーブル席を囲うように座ってまるで重役会議のような空気。
「なぜもなにも、呼ばれたので」
「高尾……聴いてないぞ」
真剣な目を向けてくる真ちゃんに溜め息をついて、オレは頬杖をついた。
「何でこういうことはバレないのに記念日のお祝いはバレたんだろ?」
「嬉しいことか疚しいことかの違いじゃないですか?」
「なっ!た、高尾……っ黒子とや、疚しいことがあるのか?!」
「ナイショ」
絶句しちゃって、かわいーの。
当たり前だけど疚しいことなんかねーし。
今日、黒子を呼んだのはただの八つ当たりだ。
先日真ちゃんに記念日を跨ぐ週末の予定を尋ねたら、何故か秘密裏にたてていたサプライズ計画が全部バレていてオレがどれだけ驚いたことか。
平然と告げてきた真ちゃんに愕然としてとりあえず黒子に連絡したわけだが。
「で、どうするんですか?週末は」
「あー、どうする真ちゃん?」
「どうもこうも……」
サプライズ要素は全く無くなったけど記念日は記念日。
真ちゃんの意向をお訊きしようじゃないか。
軽い気持ちで視線を上げたら、予想だにしない柔らかな瞳がオレに向けられていた。
「オレは、おまえと一緒に過ごすことが出来れぱ……それで充分幸せなのだよ」
「……っ」
テーピングの巻かれた綺麗な指先が、そっとオレの指に触れた。
「だからおまえさえ良ければ、その……泊まりに、来れば良い」
「……そんなん言われたら……行くに決まってんじゃん、もー……」
どうやら、オレのたてた計画は、実行されることになりそうだ。
「よかったですね、高尾君、あと緑間君も」
「うん。真ちゃん!最高の熱い夜、過ごそうな!」
「……フンッ、それは此方の台詞なのだよ。覚悟しておけ、高尾」
「…………。」
(末永く爆発してくださいこのバカップル)