後輩がツンを家に忘れたようです





付き合い出してからの高尾は何かよそよそしくなったっつーか、ムダにくっついてこなくなった。
部活のときだって前は「きゃー宮地サンイケメン抱いてー!」なんて冗談言いながら腰にまとわりついてきたりしてやがったのに。
今はむしろ「抱いてやろーか?」とか冗談言おうもんなら「えっ、は?!な、なに言ってんすか宮地サン!!ちょ、半径三メートル以内来ないでください!!」て全力で逃げてく。

まぁ、なんていうか。ムカつくことにそういうリアクションすら可愛いんだが。とか思うオレまじ末期。

と思ってたんだけど。








「宮地サンっ」

「おー、高尾。早いな」

「あの……好きです!」

「…………あ?」





今日の高尾どうした。





朝練の更に前練のために早めに部室に来たら、既に練習着に着替えた高尾がちょこんとベンチに座っていた。
いつもみたいに声を掛けたら、ぱぁっと効果音が付きそうなくらいの笑顔で駆け寄ってきた挙句、さっきの問題発言だ。

あまりの衝撃に固まってたら、目の前に立った高尾の視線がオレをまっすぐに見上げてくる。





「おはようございます宮地サン、今日もカッコイイですね」

「いやいやちょっと待てオマエどうした?」

「へ?何がですか?」

「いや、何が、って」

「あ」





言葉の途中で、何かに気づいたらしい。
そうだ今日のオマエはちょっとデレが多すぎるだろやっと気づいたのかよかった。
これで安心だなとホッと息をついて完全に油断していたとき。
高尾の顔が不意に近づいたかと思ったら、頬に温かくて柔らかいものが掠めた。
軽く甘いリップ音と共に離れていく温もりに、眼が落ちんばかりに目を見開いてたらはにかんだ笑顔が視界に映り込む。





「へへ、宮地サンにおはようのちゅー。なーんて」

「……ッ!」





ヤメロんなかわいく笑ってんじゃねえよ目が覚めるどころか何か目醒めんだろ別のもんが目醒めちゃいけねーあれ的なあれが。





「おま、高尾……いや、オマエ……っ」

「はい?」

「や……何でもねー……着替えるから、」

「……あ、宮地サンっ」





ぼすっ、

と。



胸に何かがぶつかって、一瞬何が起こったか分からず固まる。





あったかい何かが、ぎゅ、とオレの背中に回された。








「…………もう少し、宮地サンの傍に居させてください」








いやむしろ居てください。








とりあえずしばらくというか今日は誰も朝練来んな。そう思いながら、オレは少し下にある高尾の唇に噛みついたのだった。








(実は途中から部室前に緑間と大坪がいたなんて、知らない)






prev next

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -