ボクだけが知っているキミのこと



ロッカールームに都合良く二人きりとか、あるもんなのか。



顔の両サイドに両肘。及び股下に片膝押し当てられ完全に身動き取れない。

今、意味わかんねーと思った人のためにもっかい言うからな。
オレの背中は現在ロッカーに密着している。そんでもって目の前には宮地サン。そんな宮地サンの両肘はオレの顔の横のロッカーにつけられてて、更には宮地サンの膝がオレの少しだけ開いた脚の隙間に巧い具合に入り込んでもう所謂これ以上ない見事なロッカードン!説明乙オレ!

現実逃避しかけた思考を引き戻されるようにオレのデコにこつんとぶつかる宮地サンの額。
近い。近いです宮地サン。
結構現時点で限りなく限界まで近いはずなのになに限界の先に挑戦しようとしてるんですかアンタ。ゾーンにでも入る気ですか。





「で、さっきから何考えてんの?」

「……っ」





囁き声に無意識に体が震える。
息が、ふわりと唇にかかった。





「っ、あの、宮地サン?オレの勘違いか自意識過剰なら大変申し訳ないんすけどちょっと近すぎるんじゃ、とか言って〜……」

「オマエさぁ……」

「はい!?」

「余裕なくなれば無くなるほど饒舌になるよな」





気づいてんのか?
って笑われたけどそれどころじゃない。え、そんなの知らない。つうか今、そんなん言われてオレにどうしろと。





「あと混乱すると目ぇ見開いてほとんど瞬きしなくなる」

「えええオレすごくないですかそれやべえ」

「そんで」





すっと宮地サンの明るい色の瞳に見据えられて、押し黙る。
言い掛けた言葉の先がかなり気になったけれど。射抜かれるような視線に息するのすら戸惑う状況だ。





「……、っ」

「オレが真顔で黙ると、高尾も黙る」

「……へっ?」

「そんときの緊張しきった顔が面白い」

「はぁぁ?!」





驚くオレに宮地サンは至極楽しそうに笑った。

あれ?これもしかして遊ばれてる?

そんなことを思い始めたとき。不意に宮地サンがふわりと表情を弛めるもんだから、思わずぽかんとしてしまう。





「そうやってオレの言動で一喜一憂してるの見てると、なーんか可愛く思えちまうんだよなぁ……」





染み染み呟かれた言葉の意味が一瞬分からなくて。





唖然としたままに見上げていたら、当たり前のようにキスをされた。
反射的に目を閉じたら、耳元で艶やかな声。








「……キスするとき必ず目ぇ閉じんのも」








(オレだけが知ってるオマエの秘密、だな)








閉じた視界のさきで、宮地サンが甘く微笑んだのが見えた気がした。





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