微睡むキミの、



ぼんやりした視界に黒髪が映って。
ああそういや昨日コイツ泊まりに来たんだったな、と思い出す。

ベッドから出るのも正直嫌になる季節だが何か妙に目が冴えちまったから、朝飯でも準備すっかとまだ寝たままの高尾を起こさないようにそっと離れた。





「くぁ……」





欠伸を噛み殺しながらキッチンに立つ。
いつもはだいたい高尾の方が先に目覚めて気がついたら朝飯できてんだよな。
冷蔵庫のなかのもんを適当に取り出しながらそんなことを考えていたら、後ろで僅かに動く気配があった。





「高尾?起きたのか」





振り返ったけど呼んだ相手はまだベッドの中。
うっすらと目を開けてはいるがどうやらまだ眠いらしく、なんかふわふわした表情でこっちを眺めている。
もそ、と動いたあと、高尾はそのまま枕の方に顔を埋めた。





「……んぅ……みやじ、サンの……におい……、すき……」

「……ッ」





カラン。と思いっきりフライ返しを取り落とす。



コイツは、いきなりなんつー爆弾放り投げてきやがる…!!



表情こそ見えないけど、甘えたような声音と枕に頬擦りする姿に思わず変な声が出るかと思った。
じと目で睨むも本人はまだ夢のなかだ。
コイツ、起きたら覚えてろよまじで。

微かな動悸に胸を抑えつつ、オレはキッチンへと向き直った。





そんなある日の朝の出来事。








(暖かな朝のなかで)




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