「んでそんときに真ちゃんがさぁ」
「……お兄ちゃんって彼女の前でもそんなに緑間サンの話ばっかりしてんの?大丈夫?愛想尽かされちゃうんじゃない?」
「……へ?」
妹チャンから辛辣な一言をもらったのは、宮地サンという素敵な“彼氏様”が出来て2ヶ月が経った頃だった。
「オレ……そんな真ちゃんの話ばっかしてっかな?」
「それをオレに聞くのか?」
朝はチャリこいでお迎えしたら学校まで一緒。朝練終わったらクラス同じだし教室まではフツーに一緒だろ。教室でも席近いしわりと一緒だよな。昼休みは何となく一緒にごはん食べるのが通例。んで勿論部活には一緒に向かう。自主練は緑間には負けらんねーしと張り合ってたらいつの間にか一緒の時間に上がるのが当たり前になったし。したら帰り道も一緒っつーかエース様をチャリアカーでご自宅に送り届けるのが今では日課になってる(いや信号待ちでジャンケンしてっけど)。
って話とかそれ以前に、緑間と一緒にいすぎじゃね?
いつ宮地サンとの時間過ごしてるっけ??
「……やばい。真ちゃん、オレ、宮地サンに愛想尽かされちゃうかもしんない」
「だからそれをオレに言うのか?」
緑間は何やかんや大事な存在だしそれが恋愛感情とは全く別物としても、相棒だから共有する時間もやっぱ大切にしたいと思ってるわけで。
でも、端から見たとき。いやぶっちゃけたとこ宮地サンから見たとき、オレのこれってどうなの。
「……そんなに不安なら、直接本人に聞けばいいのだよ」
「えええ……」
「まぁ、聞かずとも、この程度で愛想を尽かされるような関係ならばそれまでという事だ」
「ちょ、真ちゃん妹チャンに負けないくらい辛辣……」
わざとらしく冷たい視線を送ってやったけど、真ちゃんはこっちを見もせずにシュート練習に戻ってしまった。
「って話をしてたんですけど、ぶっちゃけ、どうなんですかね?」
「オマエ……それそのまんまオレに聞くってどうなんだよ、つうか緑間今度ぜってー撲る」
髪を掻き上げる仕草が様になってる宮地サンを見上げたら、呆れた目で見つめ返された。
おっきな手がオレの頭に乗っかる。あったかい。
「……まぁオマエらがニコイチなのは今に始まったことじゃねえし、一々気にしてたらメンタルもたねえし。つか高尾の緑間に対する好きと、オレに対する好きが同じなわけねえって分かってるしな」
「……っ」
「違うか?」
そうか。これが年上の余裕か。
無意識に熱くなる頬を両手で抑える。
その手にさっきまで頭に乗っかってた手が、重なった。
「それにそんな顔見せんのも、オレだけなんだろ?」
ああ、ほんとこの人。カッコイイわ。
隠しきれないオレの表情に、宮地サンは爽やかに笑った。
(でもたまのオフの日くらいは寄越せよ、オマエの時間)
(はにかんだ笑顔に、NOの選択肢なんてあるはずない)
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