高尾くんを追え!
(※帝光高尾くん)










「まさか。高尾が……女子と密会など……っそんなこと有り得ないのだよ!!」





愕然とする緑間君に深くため息をつく。





「ボクだって信じたくありません……が、事実、それらしい噂が流れているんです」

「くっ、だったら……高尾の無実はオレが証明してみせる!」








というやり取りから三日。



週末の駅前で、緑間君とボクは目立たない格好で高尾君の後をつけ……いえ、高尾君のことを見守っていた。





「……、時間を気にしています。誰かを待っているようですね」

「……っまだ待ち合わせだと決まった訳ではない、早計すぎるのだよ」





ギリィッ。となっている緑間君を横目に普段は被らない帽子の鍔を弄っていたら、背後から気だるい声がかかる。





「つーか何?なんでオマエら高尾のことコソコソつけてんの?」

「ふざけるな!つけてなどいな……ブッ!!」

「声がデカイです緑間君」

「ぶは!ちょ、テツ、おま、緑間の顔面にイグナぶふっ!!」

「キミも声がデカすぎます青峰君」





身を隠す気はほんとうにあるんですか緑間君。というか青峰君なんでここにいるんですか。
振り返った先の褐色の彼にそういう視線を送ると「や、ヒマすぎて死にそうだったから黄瀬にメールしたらよー『さっき緑間っちが一人駅前で怪しい動きしてるの見かけたっスよ!』って返信あったから面白そーだし見に来た」と笑う。





「オフの日にわざわざ…他にやることなかったのか……」

「緑間君、ボクたちあまり人のことをとやかく言える状況じゃありませんよ」





そのとき、不意に高尾君が動き出して。結局三人揃って後を追う。
なるべく目立たないようにと思ったのに、両サイドの巨人2体のせいで既に人目をかなり引いている。というか何でボクを挟んだんですかキミら。





「高尾のやつ、あれか?デートか」

「違うのだよ!」

「ていうか皆で高尾っちストーキングするならオレも呼んで欲しかっふぶぉ!!」

「「黄瀬?!」」

「全く誰一人として尾行の何たるかを理解していないみたいですね。黄瀬くんキミは存在自体が悪目立ちしてますあとストーキングじゃありません」

「まさかの存在否定!」





もういいや無視しよう。
突然現れた黄瀬くんはこの際スルーして高尾君に意識を戻せば、近くのケーキ屋さんへと入っていく。そしてその後ろから……。





「ちょっと待つのだよ紫原」

「えー、なに緑ちん。あれ?何でみんないんの??」

「何ナチュラルに高尾っちのあとから入ってこーとしてるんスか!!」

「は?むしろ何が悪いの?」

「いや悪かねーけど、オレら今、高尾のストーカーやってんだよ」

「……。青ちん、それ外で言わない方が言いと思う」





これで赤司君以外のキセキが揃ってしまいました。
もう何かいるだけで目立つ。





「シッ、高尾が出てきたのだよ……追うぞ!(小声)」

「「「おー!(小声)」」」

「ノリノリじゃないですかキミ達……」





とりあえず、今は高尾君優先です。

お店から出てきた彼は小さな箱を手にして嬉々としている。
そのまま歩き出すその先には、確か。





「あっち確か赤司の家の方向じゃね……?」

「ま、まさか……高尾と赤司が!」

「残念だがその仮説は間違っているよ真太郎」

「……赤司君」





後ろから聞こえた声に振り返れば、そこには当の赤司君がいた。
ハットを深く被ってはいるものの逆に目立ってますよ。とは言えない。





「和成に彼女など……僕は認めない…ッ!」





緑間君に負けじとギリィ。となっている彼はとりあえず放置して高尾君の方へと視線を向ければ、ある家の前で立ち止まる。
そして、インターホンを鳴らした。





「目的地はどうやらここみたいっスね!」

「随分古びた家屋なのだよ……」

「魔女とか棲んでそ〜」

「まさか!」





ハッと何かに気づいたように顔を上げた赤司君に皆が注目する。
彼は真顔のまま、神妙に口を開いた。





「……ここは魔女の住処で、和成は幻術にかけられ此処に呼びつけられて……!?」





ちゅーにびょーはキミの頭のなかだけにしてください。

ボクがそうつっこむ前にさっきまでやる気なくしゃがんでいた青峰君が急に生き生きとした表情で立ち上がった。





「魔女だぁ?!やべえつまりオレらが高尾を助け出すわけだな!よっしゃ任せろ!!」

「え、ちょ、青峰っち?!!」

「ダメです黄瀬君。青峰君のゲーム脳が発動してしまいました」

「行くぞテツ!!」





駆け出したエースを止める素早さを持つ人間はいなかった。

ポカンとする緑間君たちを尻目に青峰君はダッシュで高尾君の入っていった家の前に立ち、まぁなんというか、予想通りドアを叩こうと手を振り上げた、とき。








「もー、なにしてんのオマエら」





腰に手を当ててドア前に現れたのは、今の今まで後をつけていたはずの高尾君で。
その視線は目の前の青峰君だけでなく、通りの角に隠れていたボクたちにもしっかりと向けられている。





「駅前から居たのは気づいてたけど、まさかここまで着いてきたの?」

「え、駅前から気づいていたのか!?」

「だって真ちゃんちょう目立ってんだもん」

「さすがホーク・アイですね」

「いやたぶん鷹の目関係ないくらい目立ってたわ」





やっぱり。
心の中でため息をついていたら、核心に迫る質問が赤司君の口から零れる。





「ところで和成。キミは誰に会いに来たんだ?」





ゴクリと、そこにいた全員が息をのむ。
不思議そうな表情で、高尾君は首を傾げた。





「え、ばーちゃんだけど?」

「「「は?」」」

「や、だから、ばーちゃん」








こうして、高尾君の無実は証明された。

その後、玄関前に出てきた彼のお祖母さんから、親切にお茶とお菓子までご馳走になったボクらが全員でお礼と謝罪とすることになったなんて、言うまでもない。








(つうかオフの日になにしてんのオマエらまじで)
(そこは触れないお約束、です)





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