(※帝光高尾くん)
(※虹の梺〜とぼんやり続き)
「という訳で、今回皆に集まってもらったのは他でもない。X'masに誰が和成と過ごすのか、早めに決めておこうと思ってね」
「は?ちょっと待って部活の緊急ミーティングじゃねーのこれ?」
部室に慣れた体で集まっているキセキ一同に高尾君が驚いた視線を送る。
目が合ったので、ボクが代表して説明することにした。
「ここでの緊急ミーティングは主に高尾君関連です」
「まじでか」
「高尾っちがいないとつまんねーっていう意見が反映されたんスね!」
「高ちんいないとやる気でねーし、あ、まいう棒食べるー?」
「お、おぅありがと紫原……つうかこの空気といいさっきの内容といい緊急性微塵も感じないんだけど」
戸惑う高尾君も可愛いです。
また説明の為に口を開こうとしたら、彼の隣に座る緑間君がブリッジを押し上げながらため息をついた。
「だからオマエはダメなのだよ高尾。今日が何日か分かっているのか?」
「え、12月の……10日?」
「そうだ。つまり、X'masまで……あと二週間しかないのだよ!!」
「あ、うんそうだね」
「高尾ォ、ワリんだけどそこの雑誌取ってくんねー?」
「青峰ェェェッ、貴様やる気はあるのかぁぁぁぁ!!!」
ベンチに凭れていた青峰君の台詞に激昂する相棒を横目に、高尾君は至って冷静なまま赤司君へと向き直る。
「つーかオレ、25日は家族で過ごすし」
「なん、だと……!?」
「あっ、じゃあ高尾っちイヴはオレとデートし」
「高尾君、24日の予定がないのならボクに一日ください」
「24日に黒子と遊ぶの?別にいいけど」
「ええええ!なにそれズルいっスよ黒子っち!!!」
無意識に口角が弛む。
これで高尾君のイヴはボクのものですね。
固まっている赤司君緑間君を差し置いてスケジュール帳の24日に『高尾君とX'masデート』と書き込む。
しかし、敵は思いもよらない場所に潜んでいた。
「おい待てよテツ、その日はさつきと一緒に鍋パするっつってなかったか?」
「は?」
「そうだよー黒ちん忘れたのー?桃ちん楽しみにしてるって言ってたよ〜?」
「え、は?紫原君まで何を……」
「何だ黒子、桃井サンと予定あるの?じゃあまた別の日に遊ぼうぜ」
「!!!!」
やられた。
ボクは高尾君の後ろで青と紫の悪魔が嘲笑うのを確かに見た。
「なあ高尾ォ、24日はオレと家でゲームしねえ?」
「それよりオレとスイパラ行こーよ。X'mas限定ケーキもあるし」
「え、オレは別に、いいんだけど……」
「待て高尾、その日は自主練のあと年末年始に向けた部活の買い出しとラッキーアイテムの調達に行くのだよ」
「へ?」
普段あれだけ高尾君と一緒にいるのだからイベント時くらいは自重しろ、と思っていたんですがそんな謙虚さが彼にあるはずもなく。
後方から彼の肩を掴んだ緑間君がいつものように不遜な態度で告げた。
「え?真ちゃん知らないの?24日25日は学校の都合で体育館使えないんだよ」
「は?」
「……そうなんだ真太郎。残念なことに、僕達は部活ひいてはバスケ以外の理由で和成を引き留めなければならないんだ……!」
「!!!」
これにより緑間君赤司君は戦線離脱したようです。これだから部活人間は。
「ゲーム」
「スイパラ」
「ゲームだって」
「ケーキケーキケーキ」
言い争う青峰君紫原君を困ったように眺める高尾君に、そっと声を掛ける人物がいた。
「あっ、あの!高尾っち!よかったら24日、オレとイルミネーション見に行かないっスか……!?」
「黄瀬くん」
「前に雑誌見て、行きたいって言ってたとこ!高尾っちさえよければ、案内するっス!」
「え、マジ?!行きたい行きたい!」
「「「え?」」」
パッと満面の笑顔で振り向いた高尾君に、黄瀬君の頬が赤くなる。ってそんな。まさか。
「え、……えっ、お、オレとで、いいんスか?!」
「え?むしろ黄瀬くんいいの?イヴの日にオレと二人でイルミネーションとか」
「いいいいイイに決まってるっス!!!」
「わー!じゃあ決定!青峰に紫原、ごめんなーっ。ゲームとスイパラはまた今度で!」
あれよあれよという間に、高尾君のイヴの予定が決まってしまった。
全員からの視線を受けて。
いつもなら怯む黄瀬くんだけど今日はムカつくことにシャララ☆と笑う。
「高尾っちとのX'masがプレゼントされたんスから、今は怖いものなんてないっス!」
(ただし、無事に年明けられるか自信はない)