(四)





「高尾っちぃぃぃぃ!!!」

「おぶふぉ」





部活の話を一頻りし終えて帰って行った緑間……クン付けしたら「気持ち悪いからやめるのだよ…!!」って言われた……とすれ違いに現れた、黄色い髪の小綺麗な男。そんな彼にタックルの勢いで抱きしめられて、思いきり変な声が出た。

というか、そんな、ぎゅうぎゅうされたら、苦し、んだけど……!

心の声が通じたのかは分からないが彼は少しだけ体を離してオレを覗き込む。
ほんと、びっくりするくらいイケメンだ。





「高尾っち高尾っち高尾っち!生きてて良かったっス……!!!」




琥珀みたいにきらきらした眼にうっすら涙を浮かべてこっちを見てくるもんだから、なんとなく直視しづらい。
というか、こんなイケメンに至近距離で見つめられたら同性とはいえどもアレだって。いや、だから……察してください。





「高尾っちが事故ったって聞いてもうオレ心臓止まるかと思ったんスよ!ほんと、マジで、高ぉっ」

「病室でうっせーんだよオマエは」





スパァァン!と小気味良い音と共に黄色が前方から消えて代わりに現れたのは深い海色の目をした浅黒い肌の男。緑間も黄色の彼も大概デカかったけど、コイツはなんか別格で威圧的だ。
でも向けられた視線は案外と柔らかくて拍子抜けする。





「よぉ高尾、調子どうだ……つってもわかんねーんだっけ?」

「ちょっ、青峰っち!デリカシーなさすぎっスよ!!」

「あ?いやだってしゃーねえだろ、わかんねーもんはよ」

「だからって、そんな言い方は……!」





キョトンと黄色と青色のやり取りを見つめていたら、スッと視界に新たな色が加わった。

目が覚めるような、透き通る空色。





「すみません。煩くして」

「あ、いや大丈夫だけど……」

「「うわっ!!」」

「……?」





さっき緑間が座ってたイスにちょこんと腰掛けた水色の彼が口を開いた瞬間、言い合っていた二人が驚いたように仰け反る。

びっくりさせんなテツ、とか。いつから居たんスかぁ、とか色々言われてるけど本人は素知らぬ顔でジッとオレのことを見つめていた。
なんか透明度高すぎて、飲み込まれそう。





「高尾君、ボクは黒子と言います。キミとは同学年でバスケの試合を通じて知り合いました」

「え、学校違うの?」

「はい」





柔らかく微笑む黒子クン。
言われてみれば緑間とは制服が違う。
そうなってくると。





「後ろの二人も、違うガッコ?」

「そうっスよ!……あ、オレは……、黄瀬涼太っス」

「青峰大輝」





少しだけ、黄瀬と名乗った彼の表情が曇ったのが分かった。
そりゃ向こうはオレのこと知っててわざわざ会いに来てくれてんのに自己紹介させるとか、ナイよな。

黄瀬クンと、ぶっきらぼうに名前だけ告げた青峰クン、あと反らすことなく視線をくれる黒子クンに向けて「ごめんな」と小さく告げた。
自分ではどうしようもないとは言え、一方的に忘れているという事実への罪悪感。

俯きかけたオレの手に白い指がそっと触れた。





「高尾君、謝らないでください」

「そうっスよ!高尾っちは何も悪くないんスから!」

「そうだぜ高尾。ぼちぼち思い出してったらいいじゃねえか」

「……キミならきっと思い出せます。また、一緒にバスケしましょう」





驚くほどに、優しい声。



瞬きするばかりのオレに、彼はまた笑った。





「記憶が無いにも関わらず、キミはやっぱりボクのことを視つけてくれました。だから」





大丈夫です。
そう告げた彼の後ろにいた二人も、心配するなと言わんばかりに笑ってみせる。





「皆、キミを待っていますよ」












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