(十二)








「高尾」

「あっ、お疲れさまです!」





校門から出たところで名前を呼ばれる。
声の主は視線を向けるまでもなくオレの人より広い視野に既に収まっていた。

部活のときとは別人のようなテンションで佇む宮地サン。
黙って立ってたらただのイケメンだ。





「帰っぞ」

「ハイ」





そんなイケメン宮地サンを、この時間だけオレは独占している。何とも不思議な気分。

なぜかオレの親と既に顔見知りだったこの人は、「毎日部活のあと迎えに来る」と言い出した両親に「自分が家まで送ります」と告げたのだ。

ポカンとするオレに笑いかけたその時の宮地サンは……やっぱりただのイケメンだった。








「もうすぐ四月とはいえまだ寒いですねー」

「だな。つうかオマエ、課題とか大丈夫なわけ?」

「あ、もう終わらせました」





特別な話をするわけでもなく、ただ家までの道を歩く。
バイクじゃないんですか?って前に聞いたら「ニケツこえーからヤダ」と言われたことをぼんやり思い出した。
でも木村さんの話だと事故前にはフツーにニケツしてたらしいから、オレに気をつかってくれてんのかなって思ったら何か自然と頬が弛む。

やっぱりこの人は、優しいひとだ。





「高尾、」

「何ですか?」

「……あー、や、何でもねえわ」





だから、宮地サンが時折何か言い掛けてやめるのは、きっとオレの為なんだろうな。と思う。
自意識過剰かもしんないけど。

当たり前のように傍に寄り添って、そっと見守ってくれる宮地サン。
こりゃ好きになっても仕方ないだろ。とオレは心のなかで愚痴った。





「……、高尾」

「はい?」

「………………手」

「…………は?」





ぼんやりしてたら、唐突にぐっと引かれた掌。
驚いて言葉も出ないオレの方を振り返ることなく歩き出す宮地サンの横顔は、少しだけ赤く染まって見えた。











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