公園




(※少しだけ未来。高3くらい)










「秋の夜って静かだよな〜」

「あぁ」





ブランコをゆらゆらとさせながら暗い夜の空を仰ぐ高尾に視線を向ければ、その広い視野はしっかりとオレを捕らえたらしい。
こっちを向いたあと、にっこり笑いかけられた。





「…こんな時間に公園とか普段ぜったい来ないよね」

「まぁ特別用がなきゃな」

「夜の公園に特別な用ってそれはそれでどうなの」

「ハハッ、確かに」





ダラダラと喋ってもう一時間は経とうとしている。
高尾の言うとおり、秋の夜はやたら静けさに満ちていて、ブランコの錆び付いた金具がギィギィと鳴る音だけがやたら大きく響いていた。





「……あー…高尾、そろそろ」





言い掛けた言葉を遮るようにがしゃんと大きな音を立てて、オレの座っていたブランコの鎖が揺れる。
視線を上げれば、僅かに急いた表情の、高尾。
降るようなキスが落ちてきて自然と笑みが浮かんだ。ら、睨まれてしまったけど、これは、不可抗力だろ。

好きなやつにキスされて、喜ばないやつなんていない。





「火神、いま、自分がどんな顔してるかわかってる?」

「ん、……笑顔?」

「意地悪なやつ、だけど」





高尾の気持ちは分からないワケじゃない。
ただ、嬉しい方が、先にきただけで。
されなかったらするつもりだったしな。





「もうしばらく会えねーのに。この薄情もの」

「そう言うなって、オマエが会いたいって言うならオレは会いに……」

「ハイストップ」





遮るように、高尾の視線が反れる。





「別にワガママ言いたいわけじゃないし、火神にムリさせたいわけじゃないから」

「ムリかどうかはやってみないとわかんねーだろ?」

「ムリ」

「……ムリじゃないかもしんねーぞ」

「絶対ムリだって」

「ムリじゃねーって」

「ムリムリ」





お互い何意地になってんだか。
途中で立ち上がったオレはいつも通り高尾を見下ろす形になる。
見下ろされたままもたまには悪くねーって思ったけどやっぱり上目に見つめられる方がいいな、と見当違いのことが頭を過った。

そのままムリだムリだと言い続ける高尾の唇をオレので塞ぐ。

ぱっと反射的に逃げようとした体を引寄せればすぐに大人しくなるから、自然と頬が弛んだ。





「……っン、ふぁ……か、がみぃ……」

「……ん、」





漏れる吐息すら飲み込みたい。
そうして、ひとつになってしまえたらいいのに。



ほんとは、オマエも一緒に、連れ去ってしまいたいと思う。

ただ、そうするには今のオレじゃまだ色々なものが足りなくて。





「高尾……っ、」

「ん…っはぁ……、な、に…?」





トロンとした甘い視線に、心臓が締め付けられたような気がした。





「待ってろ、」










(必ず、迎えにくるから)










日本とアメリカが、オレたちみたいにくっついちゃえばいいのにね。





高尾はそう言って、また笑った。












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