街中









少しだけ前を歩くその背中は、機嫌も上々。

スケジュールは完璧。





今日こそ。

高尾っちに。





好きって言う。








信じられないほどに告白のフラグをへし折られまくってきたオレ……それは高尾っち本人にだったり、キセキのメンバーにだったり、と色々……だけど今日という今日は友達の枠から脱け出してみせる。





「黄瀬くん」

「あ、っな、何スか?!」

「そろそろ休憩する?」

「そうっスね」





危っな。予定の休憩場所を危うく通り過ぎるところだった。
呼び止めてくれるとか高尾っちまじハイスペック。



二人でオープンカフェでティータイムとか他のメンツじゃ考えられないシチュエーションっスね。まぁ赤司っちなら、なくもないかもだけど。



アイスティーの氷をカラカラとストローで弄る高尾っちに視線を向けたら、ちょうど高尾っちもこっちを見ていて。
目があったらニッコリ微笑まれる。

その眩しい笑顔に心臓をまた撃ち抜かれてもうオレの心臓高尾っちに出会ってから穴だらけっス。





「黄瀬くん、今日は買い物付き合ってくれてありがと」

「そんな、オレが高尾っちと遊びたかっただけっスから!」

「ははっ、そう言ってもらえると嬉しい。黄瀬くんってほんと、みんなに優しいよね」





オレのコーヒーグラスのなかの氷が。カラン、と音を立てた。





「……っ、高尾っちにだけっスよ!」

「え?」





ほんとは。
もっとカッコいい感じの告白。とか。別れ際に。とか。色々考えてたのに。





一度溢れた感情は、留まることを知らなくて。








「高尾っちに意識してもらいたくて、高尾っちにだけ優しくしてるんス!……オレはみんなに優しくなんか、ない」

「……」

「高尾っちが、好き。高尾っちのいちばんに、なりたいんスよ……っ」








ああ、もう。
かっこわりい、オレ。

こんな必死になって、きっと高尾っちも呆れてる。
もしかしたら、嫌われた、かもしれない。嫌だ、そんなの。








「黄瀬くん」

「……っ」








そっと名前を呼ばれて、肩が跳ねる。
静かに視線を上げたら。



あったかい笑顔の高尾っちと目があった。








「黄瀬くん。オレね、いま、すごい嬉しい」








我慢できずに、高尾っちを抱き締めるのは。

もう少しあとの話。










(オレは、キミのいちばんになれますか?)










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