(※高尾くん→高3/今吉サン→大学2年のif)










休日に男同士で図書館デート洒落込んでるとか、笑えるシチュエーションやなあ。
とかボンヤリしとったら高尾のノートに書き込まれた数式に間違いを見つけた。





「ほら、ここ間違えてんで」

「あっ、ほんとだ。ありがとうございます今吉サン」





こうも警戒心の無い笑みを浮かべられると、無駄に加虐心に駆られるのは最早生まれ持った才能とも呼べるもんやと自負している。

高尾との関係に敢えて名前を付けるとしたら多分“恋人同士”というヤツなんやろうけど、互いに好いた惚れた何てことは口にしたことは一度もない。
ただ、誘えば現れ、可愛いと愛でれば笑顔を見せるコイツに好意的な感情を抱いとることは間違いない事実や。向こうがどう思っとるかは知らんけどな。

ワシがまだ高校三年やった頃。
青峰がいきなりウチ……桐皇に遊びに連れてきたキセキ緑間の相棒。で、やたら人懐こいキャラ、というのが高尾の第一印象やった。





「今吉サーン、そろそろ休憩しましょうよ〜。オレ何か飲み物買ってきます!」

「高尾……自分それさっき言うたばっかやないか」

「そのときは結局、今吉サンのOK出なかったから行ってないじゃないですか」

「その30分前に休憩がてら外でコーヒー飲んだやろ?」

「うう…そうですね」





机にだらりと身を投げ出し不貞腐れる高尾に笑みが浮かぶのを隠しきれない。
そろそろ、この宙ぶらりんの関係を終わらせんのもええかもしれんなぁ。





「高尾」

「?はい、なんすか」

「オマエ、何でワシの言うことなんか聞くん?」

「へ?」





態とらしい笑顔をどう捉えたのか。
割りと鋭い鷹の目をキョトンと見開いて、こっちを見上げてくる。
さ、一先ずオマエの方からハッキリした言葉、貰とこか。





「別に休憩したかったらしたらええやん?自分、前から態々許可とるから不思議に思っててなぁ」

「え、あっ……」





ワシの発言に一瞬固まった後。高尾の頬が一気に赤く染まる。
あーあー。ほんま可愛い奴。





「なぁ、高尾」

「……っ、あの、いや……深い意味は無いんですけど、」

「ほぉぅ」





まさかのここでしらばっくれる気か。
仕方なくふぅと胡散臭いため息を溢せば、一度外れていた高尾の視線が此方に戻ってくるのが分かった。





「ほな、ワシが行くな言うても、行ってしまうんやな……」

「えっ、や、今吉サン、そんなこと絶対に言わないでしょ…!」

「さぁ?どうやろなぁ、高尾が傍におらんと寂しいしなぁ」

「……っ」





さて、どう出るか。

そんなことを考えチラリと横目に見れば。困ったように頬を染めたまま瞳を伏せているのが見て取れた。
ほんま、無防備な子や。よぉこの歳まで誰にも襲われずに済んだな。





「今吉、サン」

「ん?何や」





まぁ、それも。今日まで。





「オレ、今吉サンのこと」





こんなにも美味しそうに据え膳された奴を食わんなんて、ほんまもんのアホやろ?








(ほら、その一言で)

(一変する)





(13/8/29)




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