星にいのる(前)
高尾に対する最初の印象は、単なる喧しいチームメイトだった。
共に過ごす時間でゆっくりと育まれた感情と絆。
一年の冬には信頼に価する人間へと変わっていた。
そして二年の夏に自覚した、想い。
それは季節を重ねることで、自分のなかに確かな形を成していく。
夏の大会を終えたとき、高尾がぽつりと零した言葉がオレを何れ程喜ばせたことか。
「卒業しても、真ちゃんと一緒にバスケしてーなあ……」
無邪気に笑うその姿に愛しさを覚え、一回り小さなその体を掻き抱きたい衝動に幾度となく襲われたことなど。
オマエは知らないのだろう。
違和感を感じ始めたのは、二年の秋。
なぜか距離を取ろうとしているように感じて、まさか自分の想いが悟られたのではと煩悶した。
だが自分から踏み出すことが出来ないままに冬を終え、新たな春を迎え。
気がつけば三年の夏が終わろうとしていた。
そして、その夏の終わりに。
高尾の口から聴かされたのは。
オレとの別離を意味する、言葉で。
「バスケは、高校でおしまいにする」
笑顔の向こうに隠された真意を、そのときのオレは見透かすことが出来ず。ただそれが高尾の選んだ選択ならばと、口を閉ざした。
だが本当は、引き留めることで更なる拒絶を見るのが、怖かっただけだ。
そして、冬の大会を切欠に高尾と話す機会は極端に減った。
各々受験ということもあったし、単に二人を繋いでいたバスケという絆を失ったからこそという理由もある。
それに何より、オレがアイツに全て頼りきりだったことに、初めて気づかされた。
オレは、アイツに対してのみ、人事を尽くしていなかったのだと。
「ばいばい、緑間」
そうして、卒業を期に。
オレは高尾という存在を失った。
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