(四)
最後の試合の最後の一秒まで。
この目は確かに、あの美しいシュートフォームを焼き付けるようにオレだけの世界を映し出していた。
そしてオレは、試合終了のホイッスルと共に。
あの広大な視野を失った。
別に目が見えなくなったわけじゃない。
日常生活にも困らない。
ただ今まで視えていたものが、視えなくなっただけだ。
そう自分に言い聞かせて、卒業まで笑っていつも通り過ごした。
引退を機に大きく変わったのは視野の広さと、真ちゃんという存在が、オレの日常から消えたこと。
「緑間君、S大の医学部志望なんでしょ?すごいよね〜」
クラスメートらがそんな話をしているのを耳にしても、本人の姿を目にすることはなかった。
「クラスが違ってバスケがなくなっただけでこんなもんか……」
結局、オレらの繋がりって。
オレからの接触とバスケだけだったんだよな。
そんなことをぼんやり考えながら見上げた冬の空は、濁って太陽の光を覆い隠していた。
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