愛がなければ生きていけない―なんて吐き気のするセリフだ。私に言わせれば、愛なんて醜い性欲を言い訳するための利己的に付けられたものではのだろうか。

私は愛なんて、嫌いだ。

人、自然との関わりに様々な形の愛があるなら、私は私以外の全てはただそこに存在するモノとしか認識しない。機械的にしか認識しなければ、満たされることもましてや傷付かされることもないのだから。

それでも私のことを好きだという奴がいる。


「好きぜよ」


仁王は、私の嫌いな言葉で愛を紡いでいく。そんな言葉、私にとっては耳障りなもので、迷惑でしか有り得ないのに。


「興味ない」

「そりゃ残念じゃ。」


この男は毎日毎日飽きもせずに私の元を訪れては、私の頭をじわりじわりと侵食していく。人なんて単純に出来ているはずなの仁王雅治だけは違った。このままでは私の世界が壊されてしまう。その前に早く。はやく。私の両手は攻撃的防衛本能に命じられるままに仁王の白い首を捉えた。

ゆっくりと、確実に力を込めていく。


「お前さん、になら、殺されても、…っええのう。」

「…はっ。アンタも大概頭おかしいんじゃない?」


ゆるゆると仁王の手が伸びてきて私の唇をなぞる。その行為になんともいえない感覚が走ったのもつかの間、彼の両手が私と同じように私の首を捉えた。苦しそうな表情のなか、にやりと口角を吊り上げるのが見えた。それからあっという間に押し倒されてしまった。


「さき、好きぜよ」


仁王は、私の嫌いな言葉で愛を紡ぎながら、私を暗闇へ突き堕とそうとする。
身体が酸素を求めて、なんとか息をしようとするがそれを仁王が邪魔をする。嗚呼、仁王は苦しむ私を見て何を思うだろうか。閉じかけた眼で仁王を見ると狂気にも似た慈しみの笑みを浮かべて私を見つめていた。刹那私は理解した。仁王は私と同類なのだと。この世にありふれた愛という安っぽい定義に絶望した。


好きだから、堕とす。


「あたしのこと、嫌いになってくれたら、…っ愛してあげるよ」


堕としたいから、嫌いになる。


「…上等じゃき」


それが、私たちの。





と呼ぶにはみすぎた、
110323
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