薄桜鬼短編 | ナノ



とろとろにとけてしまって



たとえば。なにかを落としてしまった人がいたら、彼女は間違いなく拾ってあげるだろうし、迷子になった子供がいたら、彼女はその子の親が見つかるまで探すだろう。困っている人がいたら、勿論助けるだろう。…実際彼女がそれらをやっているのを巡察中に見かけたから『たとえば』の話ではないのだけれど。
彼女はいつも他人に優しく、自分のことはいつだって後回しだ。(とはいえど巡察中は彼女の責任は僕にあるわけだから、勝手に行動されると困ったけど。)


「…総司さん!羽織も着ないで外に出て、風邪ひきますよ!」

「んんー」

そして僕は今、そんな優しい彼女と共に生活している。僕の元へ慌てた顔して走ってきた彼女は手に僕の羽織を持っていて(もしかしたら僕を確認してから羽織を持ってきたのかもしれない)、やはり優しい彼女に笑みをこぼす。

「笑ってる場合じゃないです」

そっとかけられた羽織にはまだ彼女の温もりが残ってる。
―さて。彼女と出会ったのはいつだったか。最初は邪魔ばかりする彼女を皆がどうして斬らないのか不思議だった。でも近藤さんが認めちゃったわけだし、まあ自分を無理やりに押さえ込んでいたっけな。そうして彼女と生活していくうちに、僕は彼女に興味を持っていた。それは恋愛感情としてではない。

「なにを考えているんですか?」

「…秘密、」

僕の気持ちがいつ【好き】になったかは分からない。もしかしたら最初からだったのかもしれないし。
怒ったようにぷう、と頬を膨らます彼女が可愛らしい。隣に座らせると、僕は彼女の横顔をちらりとみた。小動物のような愛らしさの中に、凛としたものがあり…。

「ねえ」

いつの間にか僕の心に入り込み、そして僕を理解してくれていた彼女。僕が新選組の刀として役に立たなくなっても、彼女は決してそれを馬鹿にしたりはしなかったし、また労咳であることを周りに言いもしなかった。あんなに辛くあたっていたのに、君はいつも逃げずに僕の傍にいた。

知ってるかな。僕が病と知って。君がいて僕は実はとても安心していたこと。僕の心を君が開いたこと。


「僕は、君が好きだよ」


こちらを見た彼女は頬を赤に染め、小さく僕の名を呼んだ。彼女の唇にそっと自分の唇を重ねる。

ねえ、
僕が君を好きになったのはいつだったか。



とろとろにとけてしまって
(君は僕の心を)
(とかすんだ、)

*

べた惚れさまに提出。
素敵な企画ありがとうございました!

すごくすごく優しいヒロインちゃんが愛しくて、
好きすぎてしょうがないんだよ、みたいな沖田さんの惚気。







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