「……おまえ、これ」 「だから、失敗しちゃったんだってば」 「……まあな、見た目はな。仕方ないとして……なんか、尋常じゃなく焦げくさいんだけど、コレ」 「…………」 「おまえ、味見した?」 「し、してない……」 「よし、道連れだ」 「えっ、や、ヤダ……!」 「ヤダじゃないよ。こら、逃げんな!」 「佐伯くんにあげたんだもん、佐伯くんのだもん! もうわたしのじゃないもん!」 「ダダこねるな! ガキかおまえは! さっさと食べて、反省会するぞ!」 「やーだー!!」 ・ ・ ・ 「…………」 「…………」 「……苦っ」 「苦〜い!」 「匂いを裏切らない味だな、ホント……でも、これ、何の苦さだ? 焦がしただけじゃないだろ」 「……ちょっと、佐伯くん用にアレンジを」 「ほう?」 「ほら、佐伯くん、コーヒーが好きだし……」 「で?」 「コーヒーの粉をチョコにトッピングしてみました」 「…………ちなみに、聞くけど」 「うんうん」 「コーヒーの粉って、インスタントコーヒーだよな? 一応、聞くけど」 「ううん、挽いたやつだよ?」 「…………」 「本格派な佐伯くん用にアレンジしました☆」 「…………アホか、おまえは!!!!」 「えっ、どうして?」 「どこの世界に挽いたコーヒーをトッピングに使うバカがいるんだよ! つーか、ここにいるな。いるんだな、ここに……」 「さ、佐伯くん?」 「つーか、何でチョコがこんなに焦げてるんだよ。それがそもそも問題だ」 「えっと、オーブンで焼いたから……」 「……なんでオーブンで焼く必要があるんだ? これ別に焼きチョコ作るつもりじゃなかったんだろ。つーか、そもそも何を作るつもりだったんだ?」 「え? ……トリュフチョコ、だけど。その、ココアパウダーの代わりにコーヒーの粉をまぶした……」 「……うん、トリュフチョコなら、尚更オーブンは必要ないよな? なんで入れた」 「チョコが固まらなくて、水っぽいから、水分飛ばそうと……」 「あかり」 「なあに、佐伯くん」 「何もかも間違ってる」 「そ、そうなの……?」 「頼むから、素人がアドリブでお菓子作りするなよって話。お菓子作りはレシピ通りが基本なんだ」 「う、うん……」 「今日、帰ったら珊瑚礁に来い。特訓してやるから」 「……え、遠慮しておこうかなあ?」 「何でだよ」 「だって、佐伯くん、超スパルタそうなんだもん」 「あかり」 「なあに?」 「その根性こと叩き直してやるから、大人しく来い」 「お父さん、目が怖いよ……」 「おまえのためを思って言ってるんだ」 「優しい佐伯くんがわたしは好きだけどなあ」 「何か言ったか?」 「ううん、何も!」 2011.07.26 *終わっとくね! *時期外れもいいとこでした。 *おまけのおまけもあったり <-- --> |