一番のキミ #1


ヒソヒソ声にため息が混じる。わたしも同じくため息をつきたくなってしまう。聞きたい訳じゃないのに耳に入ってしまうウワサ話。

「ねえねえ、あの二人、やっぱお似合いだよね?」
「だよねー、思う思う!」
「まさにプリンスとプリンセス! いいなあ、憧れちゃうなあ〜」
「ねー」

“はね学プリンス”のファンのみんなでさえため息をついて、うっとり見とれてしまうのは、今年の学園祭で人気投票でミス・はね学に選ばれた女の子のこと。男子生徒で一位を取ったのは、もちろん“はね学のプリンス”こと佐伯くん。

――実を言うと、最近ウワサが立っている。この二人が付き合っているんじゃないかって。

そんなウワサが広まったら、大変なことになりそうだと予想されたものの、ファンの子たちはさっきみたいに『ステキ』とため息をつきながら応援する始末。決して悲しみから来るため息じゃない、感嘆のため息。

確かに、ウワサのお相手の子は本当にステキな女の子だった。長いサラサラの髪は艶やかで、まるで波打つように自然なウェーブを描く。切れ長なのに、ぱっちりとした印象の綺麗な瞳を縁取る長い睫毛はまるで、ミルク飲み人形のよう。そうして、かわいらしい、お人形のような顔にスラリとした体……プロポーションも抜群。背の高い王子様と並んでも丁度いい身長差。何から何まで、お似合いな二人。あまりにも、お似合いな二人。

ふう、とため息をつく。胸の辺りがやけにスースーと寒々しいのは、何も秋風だけのせいじゃないはず。

「何だろうなあ……」

呟いた台詞とため息が、抜けるような秋空の深い青に吸い込まれて消えていく。


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