一番のキミ #3


久々に佐伯くんと話が出来るはずだった昨日のバイトの時間。
結局あれから、気まずい空気が流れて、ほとんど会話がなかった。送ってもらった帰り道も会話なし。家の前まで来て、「送ってくれて、ありがとう」と何とか口を開くと、「どういたしまして」と一言。冷ややかな空気。何だろう……何だか、うまくいかない。せっかく久々に話しが出来るはずだったのに、どうしてこんなことになってしまっているんだろう? もっと話したいこと、いっぱいあったはずなのに、全然、口に出せない。さっきの『おめでとう』の他にも、もっと……。
ぐるぐる考え込みながら、玄関を開ける。台所でテレビを見ているお母さんに声をかける。

「ただいま」
「おかえり、遅かったわね。ご飯温めるから、早く下りてきなさい」
「うん」

2階に上がって、自室に入って、制服から部屋着に着替えて、階下の台所へ。お母さんとテレビを見ながら、お喋りしてごはんを食べて、後片付けをして、それからお風呂、明日の予習復習を何とかこなして、ベッドにもぐり込んだ。意識したくないのに目を瞑ると、珊瑚礁での佐伯くんの台詞が頭の中でぐるぐると回る。

『……ヘンな奴』

うん、ヘンだよ。ヘンだよね。一人で余計な心配して、考え過ぎて…………怒ったような声まで出して。何でこうなっちゃうのかなあ。どんどん自己嫌悪の悪循環に嵌り込んでいく。このまま眠れないかと思ったけど、結局、睡魔には勝てなかったらしい。しばらくすると、眠ってしまっていた。
そうして翌朝、いつもの時間に目が覚めたものの、何だか気分が晴れなくて、起きたくない。――起きたくないなあ。口の中で呟いてみる。起きたくない……けど、現実問題、そうも言っていられない。仕方なしに起きて支度を始める。

「あーあ……」

最近、ため息をついてばかりな気がする。けれど、どうして?


→次のページ

[back]
[works]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -