どんなこどもにも秘密ってやつがあるのさ +α


(※おまけ)(※未来ねつ造注意です)



17歳のクリスマスの夜。訳の分からない奇跡を起こした訳の分からない神様に願った祈りはちゃんと天に届いていたらしい。一度離れ離れになった俺とあかりは卒業式の日に再会を果たして、それ以来ずっと離れずに一緒にいる。灯台の下で誓った約束のままに。
母親になったばかりのあかりは生まれたばかりの赤ん坊を抱き抱えて微笑んでいる。ぐったりとして疲れきっているのに、赤ん坊の額に頬を寄せて笑いかけている。もうすっかり母親の顔だ。

「瑛くんも抱いてあげて?」

何だか不思議な感覚だ。小さすぎて心もとないのに、生きて存在している。そばにいる。動いてる。近寄れば目蓋もちゃんと開かないのに、何事かを感じている。絶対落とさないようにしっかり、でも、力加減に気をつけて抱きかかえた。

「はじめまして、だね?」

あかりが俺たちを見上げて笑いかける。あかりにはずっと秘密にしていることを思い出す。俺は秘密を知らないあかりの顔と、まだちゃんと目も開かない息子の顔を交互に見つめて呟く。

「まあ、正確には『はじめまして』じゃあ、ないんだけどな……」
「?」

秘密を共有しているはずの息子はまだこの世に出てきたばかりで、言葉を話すどころか、多分、何を言われているのかすら分かっていないのだろう。さっきからあらぬ方向に向けて手を伸ばしている。あかりはきょとんとした顔をしている。ああ、でも、

「でも、おまえからしたら『はじめまして』か」

おまえが俺と会うのは今日が初めて。そういえば、名前はおろか兄弟がいるのかも聞いていなかった。それでも、あのクリスマスにやって来たのがおまえなら、

「はじめまして。ようこそ。これから、よろしくな?」

人を食ったようなニヤニヤ顔が目蓋の裏に浮かぶ。この生まれながらの無垢な存在があんな風になるとしたら、今から感慨深い。けれど、どう育ってもいい。元気なら。これから、三人でたくさん思い出を作っていこう。それはきっと、あの置時計にも変えられない、かけがえのないものだろうから。今この瞬間だって、まさにそうなのだから。

でたらめな方向に伸ばしているちっぽけな手に、軽く指先をふれる。思いがけない力強さで赤ん坊は俺の指先を握った。男同士の握手。秘密は秘密のまま。母親にはきっとこれからも内緒だ。どんなこどもも秘密をかかえている。生まれながらに、生まれてくる前からさえも。




end!
2011.02.01

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