どんなこどもにも秘密ってやつがあるのさ #1


(*少し変わった設定なのでご注意です)



別に人見知りが激しい訳じゃない。だから、多分、珍しい。こんな風に一目見た瞬間いけすかない奴だな、なんてことを思うのは。





振り返る。やっぱり、いる。同い年くらいの男。ということは、店を出てきてからずっとか? 
前を向く。今度はスピードを上げて早足で歩く。適当な路地を見つけて入り込む。人通りが少ない道を進んでいって、もう一度振り返った。

「…………あのさ」
「ん?」

軽く首を傾げるような仕草。こんなにあからさまに人をつけまわしておいて、そんな反応は白々しすぎると思う。それでも万が一でも顔見知りという可能性もあるだろうから、辛抱強く訊いた。一応、外向けの仮面をつけて。

「気のせいだったら、悪いと思うけど……」
「うん、なに?」
「君……もしかして、僕のあとをつけてる?」
「あれ? ばれちゃった?」

呆気にとられたように、そう言った。本当につけてたのか……とこっちはげんなりしてしまう。というか、尾行するなら、隠れるとか、もっとそれらしく振舞ったらどうだ。いや、ばれずに尾行されていたら気持ち悪いけど。気持ち悪すぎるけど。

「おかしいなあ……なんで、ばれたかなあ?」

そう言って首を傾げている、相手の顔を改めてよく観察してみる。
年は同じくらい。背格好も大体同じ。
ここらでは見慣れない制服を着てるから、たぶん別の高校の男子生徒。
顔はなかなか整っているものの、言動と行動がさっきから常識と微妙にずれているから、残念な印象。
少し長めの茶色の髪が風に揺られている。どこかで見た色という気もしなくはない色。……まあ、茶色の髪なんて巷にあふれているけど。それはおいておいて……。

「もしかして、ストーカー?」
「うーん、当たらずとも遠からず、かな?」
「どっちだよ」
「さあ、どっちでしょう?」

人を煙に巻いて楽しんでるような喋り方。それで話は冒頭に戻る。なんていけすかない奴なんだ。尾行してることといい、それがばれても一向に構う様子がない。にやにやして人をおちょっくているような感じがどうにも……。

「あんた、誰だ」
「それを言ったらさ、たぶん、ビックリすると思うんだよね」

肩をすくめるようにして、そいつは言った。

「だから、誰でもいいじゃん」
「いや、良くないだろ」
「それよりさあ」
「話、聞けよ」
「それ、クリスマスプレゼント?」

そう言って、こっちが持っている紙袋を指さした。さっき、店で散々迷って買ったクリスマスプレゼント。明日のパーティーで出すプレゼントだ。プレゼント交換だから、誰に渡るかは分からないものの、何となく、あいつに渡れば良いと思って買ってしまった、プレゼント。
問題は、それをなんでこいつが知っているのかっていう話な訳で。

「きっと喜ぶよ」
「誰が」
「さあ、誰でしょう?」

にやにやと笑いながら、そんな風に言った。本格的に腹が立ってきた。それを見計らったのか、そいつは「もう、行くよ」と言い出した。執拗な尾行をしていた癖にあっさりとした引き下がり方。

「じゃあね。明日、うまくいくといいね」

そう言って手をひらひらと振る。「今日は顔が見られて良かったよ」そんな捨て台詞を残して公園横の路地に消えていく。呆気なく消えた背中に向け、呟いた。

「つか、誰だよ……」


――本当に誰だ、一体。





(※に続きます)
[title:にやり様]2011.01.07

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