書き入れ時/クリスマス(おまけ)


「おや、珍しい」

昼間、あかりが見つけてきて、うっかり買ってしまった、訳の分からない飾り付けを見て、じいちゃんが呟いた。もみの木の葉を集めて丸めて作ったような何か。まさにどこに飾るか考えて手に持っていたときだった。

「じいちゃん、知ってるの?」
「これは宿り木だな」
「“ヤドリギ”ですか?」
「ええ。ちょうどこんな風に丸まって、木の枝にくっついているんですよ」
「くっついてる?」
「こう、枝をからめるようにして、くっついているんですよ。寄生植物というのかな」
「へえ、おもしろい生え方をするんですね」
「僕もこんな風に綺麗に飾られてる宿り木は初めて見ましたよ。こうしてみると見違えるな」
「クリスマスの飾り付けコーナーにあったんです」
「こいつったら、訳もわかんないのに、気に入ってさ」
「だって、珍しかったんだもん」
「勉強になったな。宿り木っていうんだって。今度からは自分で調べろよ?」
「瑛くんだって!」
「じゃあ、勉強ついでにもう一つ。二人は宿り木を見るのも初めてかな」
「?」
「初めてだと思います」
「それじゃあ、こういう話は聞いたことがないかな。宿り木は別名『キッシング・ボール』といってね。これの下で口づけを交わした二人は幸せになれるというジンクスがあるらしい」
「えっ」
「キ……!」
「まあ、外国のジンクスだけどね」

からからと笑いながら、じいちゃんは飾り付けを再開する。けど、何気なく落とされた爆弾の衝撃が大きすぎて、ちょっと、身動きが出来ない。手に握った緑色のものを思わず握りつぶしそうになっていることに気がついて、手の力を緩める。

「……知らなかったんだよな?」
「し、知らなかったよ! 初めて見たんだもん!」
「お、俺だって、知らなかったからな!」
「う、うん……」
「偶然だからな」
「うん……」
「か、飾るからな? これ」
「うん」
「別に、変な意味はないからな」
「うん、折角買ったから、だよね」
「ああ、もったいないからな」
「うん、もったいないのは、よくないね」
「それだけ、だからな」
「うん…………」

うん分かってる。どれだけ言い訳を重ねても、一度意識してしまったものは中々、頭から去ってはくれない。微妙な空気のまま、とんでもない地雷だった緑色の飾り付け場所を探す。まったく、とんでもない贈り物を買ってしまったものだ。




*おしまい!
*珊瑚礁のクリスマス風景を覗き見隊。

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