好きだ!うそだ! #2


ライブは、まあまあよかった。控えめに言っても、よかった。針谷のバンドみたいな音楽は普段聴かないけど、生演奏は迫力が違う。……やっぱり、ギターやれるとカッコいいよな……。くやしいから、当人には言わないけど。

横に立つあかりの体がステージのカラフルな明かりに照らされてゆらゆらと揺れる。聴衆全体がバンドの音楽に合わせて波のように揺れていた。リズムを取るように手を打つあかりと時折、体がぶつかった。

アンコールが終わって、バンドの連中がステージを去って、俺たちも出口へ向かった。まだライブの熱気が冷めないまま、あかりが「ハリーたち、かっこよかったねえ」と笑顔で言った。いつもなら、むくれてしまったかもしれない一言。けれど、このときは素直な気持ちで頷いていた。

「ああ、そうだな」
「今日のライブ、最高だったね」
「まあな。でも、ちょっと耳が痛かった」
「瑛くん、ウルサイの苦手だもんねぇ」

頷くようにして言って、あかりは俺の目を覗き込んだ。

「ねえ、瑛くん」
「何?」
「今日は付き合ってくれて、ありがとう」
「……別に。俺も結構楽しかったし」
「本当は賑やか過ぎるとこも、混んでる場所も苦手でしょう? だからね、付き合ってくれて、ありがとう」
「………………」
「今日、瑛くんと一緒にライブに来られて、うれしかった」

また勘違いしそうになる、一言。あかりのこういう台詞は、ただの友達としての“うれしかった”なのか、それとももっと別の意味があるのかな。最近、そういうことばかり考えてしまう。そんな自分がイヤで、ウンザリしていた。

あかりの携帯が鳴った。携帯を開いて、ビックリしたように目を見開いた。

「ハリーからだ」
「針谷から?」
「うん……ええと、“打ち上げ、来ないか”だって」
「打ち上げ?」
「うん。だから、“残っとけ”って。……どうする?」
「……まあ、せっかくだし」
「じゃあ、ハリーにメールするね!」

時計を確認する。まだバスも残っている時間。適当な頃合いを見計らって抜ければ、バスで帰れるだろう。


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