好きだ!うそだ! #1


何でこんなことになってるのかな、と思うけど、そんなことを考えている場合じゃなくて、目の前の状況を何とかしなくちゃいけない……のに、頭ばかり空回って、いい対策なんか浮かばなかった。テーブルの上にある、事の元凶を恨めしげに見つめた。





クリスマスを直前に控えた日曜日。あかりがライブに行かないか、と誘ってきた。何でも針谷のバンドも出るらしい。あかりが笑顔で言う。

「クリスマス・ライブなんだよ」
「……クリスマス当日じゃないだろ」
「もう、捻くれてるんだから!」
「悪かったな」

あかりが唇を尖らせてむくれてみせて、俺は俺で捻くれてそっぽを向いた。いつものケンカになりそうな予感。あかりが、ふう、と小さく息をついた。

「せっかく、カップル料金でお得にチケットが買えるのに……」
「……かっ」

――カップル!?

思わず前のめりになった。他にも、針谷、チケット代取るのかよ、とか、あかりのヤツ、自分でチケット買うつもりなのかよ、とか色々言いたいことはあったけど、“カップル”の一言で全部かすんでしまった。

「か、カップルって、おまえ……」
「うん、あのね、カップルだと別々に買うよりずっとお得なんだよ」

そんな風に言って、屈託なく笑っている。……ああ、なんだ。いつものあかりだ。いつもの、天然ボンヤリで無自覚に爆弾発言してくるあかりだ。今回の“カップル”の一言だって全然深く考えていないんだろう。
あかりが眉を下げて残念そうに言う。

「瑛くんと一緒に行きたかったけど、ダメそうなら……」
「ダメだなんて言ってないだろ」
「えっ」
「空いてるから、その日」

あかりが顔を輝かせて「ほんとう?」と訊いてくるから、頷いてやった。

「仕方ないから、付き合ってやる」

そしたら、「やったー」とか言って、ニヤニヤし出すんだ。勘違いしたらダメだって、自分に言い聞かせたけど、ダメだった。あかりのニヤニヤ笑いが移ってしまって、だらしのない顔になってしまった。あーあ。



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