不機嫌な理由は教えられません #2


「…………避けられてるのかなあ」

もしかして、じゃなく、確実に。そんな予感がある。

「どうしたん、あかり? めっちゃ暗い顔して」

机に広げた雑誌の上に突っ伏しそうなわたしに心配げに声をかけてくれる西本さん。放課後一緒に過ごそうとわたしから誘ったのに、頭の中がモヤモヤしてうまくいかない。今日は雑誌片手にいくら計算しても散財の予感しかしない。今日は“ダメ”な日なのかもしれない。悩みの種は……はっきりしている。

「あのね、西本さん」
「ん、なに?」
「これは、わたしの知り合いの話なんだけどね……」
「もしかして、相談事? 乗るで、なになに?」
「うん、あのね……」

――ずっと週末のお休みを一緒に過ごしていた友達。何度も遊ぶうちに距離も縮まって、随分仲良くなれた気がしてたのに、最近、その友達の様子がおかしい。

「様子?」
「うん、あのね……誘っても、いつも断られちゃうんだ……」
「いつも? たまたまなんとちゃうん? たまたま、用事が入ってた〜とか」
「通算4週ほど連続で断られているんですが……」
「あ〜……なるほどなあ…………」

こんなことは今までなかった。誘いは相手の好きな場所のはずなのに、断られてしまう。パソコンの占いで恋愛運も調べてみるとニコちゃんマーク。それでも返答は「悪い、気が進まない」。もしかして、と思って、お隣の遊くんに様子を訊ねてみても嫌われている訳じゃないみたい(それにしても、遊くんはどうして、相手の好感度まで把握できているんだろう?)

「ちなみに、下校のお誘いもことごとく断られてばっかり」
「…………」
「もしかして、じゃくて、避けられてるのかなあ、わたし…………」

ぽつり、呟く。声は自分で思ったよりもずっと心細げだった。
西本さんが気遣わしげにわたしを見つめている。ずりずりと椅子を引き寄せ、座りなおして、口を開く。

「あのな、あかり。つかぬこと聞いてもええ?」
「うん、なあに? 西本さん」
「友達って、もしかして、プリンスのこと?」
「えっ!??」

がたたっ、と椅子ごと後ろにのけ反る。騒音に教室に残っていた他の生徒が何人かわたしたちの方に目を向ける。申し訳なくなって、肩を縮こまらせてしまう。西本さんが口の横に手を当てて、小声で囁く。

「……図星なん?」
「……人が悪いよ、西本さん」
「だってアンタ、分かりやすいんやもん」

そう言って西本さんはカラカラと笑う。笑ったかと思うと、その眉間に皺が寄る。気難しげな顔で、「でも、それは由々しき事態やねぇ」と呟いている。表情がコロコロと変わって、見ていて飽きない。



>> next
>> back

[back]
[works]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -