不機嫌な理由は教えられません #1
週末、わたしは携帯の画面とにらめっこしている。――臨海公園。その名のとおり海を臨める公園。遊覧船に展望台、煉瓦道をのんびり散歩するだけでも、きっと楽しい。大丈夫、ここならきっと。……うん、きっと。ひとしきり自分に言い聞かせて、通話ボタンを押した。
「もしもし?」
「あ、佐伯くん? わたし、海野あかりだけど」
「番号見りゃわかるよ。で、なんか用か?」
「えっと……今度の日曜、臨海公園に行かない?」
意を決して誘ってみる。受話器の向こうで少しだけ言い淀むような気配があった。それでもう、気分は重く沈みこむ。返答が予想出来てしまいそうで。
「あぁ、と……。パス」
そうして案の定の返事。
「悪い、なんか気が進まない。……じゃ、切るぞ?」
受話器からツーツー、と素っ気ない音がする。――断られちゃった。いつもみたいに『うーん、残念……』だけで済ませることが出来ないのには理由がある。もう、一月近く佐伯くんと週末に会っていない。
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