探しものは何ですか?


一緒に帰ろうと、親友を誘いに来てみれば、親友は鞄の中身をひっかきまわしていて忙しい様子。

「どうしたん、あかりー」
「西本さん」

上げた顔の、二つの瞳がほとんど泣きそうになっていて、西本は仰天した。大きな目を見開いてうろたえ始める。

「ど、どないしたん!? なんで泣きそうになってるん?」

大きな声にクラスの人間が二人に視線を送る。海野は慌ててかぶりを振って「なんでもないの!」となんでもない風を取りつくろっている。

「嘘や。なんでもない顔には見えへん。一体、何があったん?」
「……ちょっと、探し物してて」
「探し物?」
「うん。鞄にいつも入れてるものなんだけど、見つからなくて」
「いつも入れてる? 小っこいものなん? お守りとか?」
「うん、まあ、お守り、みたいなもの、かな?」

海野は歯切れ悪く頷いている。心なしか目尻が赤い。また泣き出してしまいそうだったので、西本は「あたしも探すの手伝うわ!」と胸を叩いて見せた。

「えっ、で、でも……」
「友達なんやし、水臭いこと言わんと! あかりはもっかい鞄の中、よっくチェックしてみ? あたしはそこらへんに落ちてないか探してみるから」
「ごめんね、西本さん……」
「何もやって! ……あれ?」
「?」
「なんやこれ? 貝殻?」
「あっ!」
「わっ!」

突然大声を上げた海野に驚いて西本はのけ反る。その手のひらには白い小さな貝殻が乗っていて、海野は安堵のため息をついた。

「それ! それだよ、西本さん! わたしの探しもの!」
「へっ? これ?」
「よかった〜見つかって!」

西本から貝殻を受け取った海野は大事そうに手の中の貝殻を指先で撫でている。西本は「こんなんがお守り?」と首を傾げている。海野は頷きを返す。

「うん……大切なものなの」





――あの、バカ。
海野と西本。二人の少女のやり取りを自分の席で聞いていた少年は胸の内で悪態をついた。あのバカ、デカイ声で喋って、全部聞こえるだろ、とか、あんな物、こんな場所に持ってきてんな、とか、そういう悪態を。半年前、少女が言うところの「大切なもの」を海で拾って少女に手渡した少年は一人、離れた席で赤面した。

「おーい、佐伯ぃ! 何ボーっとしてんだ。今日おまえ、俺様と約束……って、どうした?」
「なにが」
「いや、何がって、おまえ、顔真っ赤……」
「帰ろうか! 針谷くん!」
「ハリーって呼べよ!」
「断る!」



2011.04.26
(*バカップル30題の「弱点」没バージョンをサルベージ。没理由→弱点的要素が何ひとつないよっていう。そして毎度のことながら、関西弁が分からなくて、春。いつもごめんよ西本さん)

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