さよなら、愛しの花嫁さん
「花嫁姿、ほんと綺麗だった」
ベッドの中で名前に囁く。
『清志の花婿姿もかっこよかった』
俺の首に手を絡める。汗ばんだ頬に触れ、唇を重ねた。
『ん……っあぁ……ハァ』
「ハァ……んっ……名前っ」
唇を離すと、とろんとした目で俺を見つめていた。もう一度頬を撫でると、ゆっくりと瞼を閉じた。
「風呂は……明日でいいか」
今起こすのも気が引けるし。そうとう眠かったのか、名前はもう静かに寝息をたてている。ゆっくりと上下する胸に、心臓がキュッと締め付けられた。
鎖骨の少し下あたりに唇をあて、きつく吸い上げれば、名前から小さく声が漏れる。胸には赤い花弁が落ちていた。
ふと時計に目をやると、日付が変わる寸前だった。
「さよなら、愛しの花嫁さん」
そう呟き、軽くキスをしてから布団を被った。明日からの生活に胸を高鳴らせながら。
ピピッと時計が鳴り、明日が来たことを告げた。
さよなら、愛しの花嫁さん
おはよう、愛しの新妻さん
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