リレー小説 | ナノ
心の綾

これは俺等の心理戦。
複雑に入り組んだ、心と心の持久戦。
でもそれも今日までにしようと思う。


俺の親友は俺の首をお絞めになるのが大好きで、俺の首をよく絞める。
俺はそれに苦痛で顔を歪める。
それは毎回俺がアイツに「ダイキライ」と伝えたら起こる日常の一部。
毎日毎日、首の痣が残るほどにアイツは俺の首を絞める。
日に日にアイツは力が強くなる。
俺はそれを知っててまたあの言葉を呟く。
そうじゃないとダメになってしまうから。



―――……


「丸井…」

「ん、何?」

放課後の屋上。
じりじりと照りつける太陽。
カッターシャツ一枚でも暑い、汗で肌が透ける。
何を言いたいのかなんとなくわかる。
何年も親友を続けてたら当たり前なんだけどさ。
だから俺は言ってやる。

今日も変わらずに、
「大っ嫌い」

「っ……!!」

後ろから凄い力で引っ張られ押し倒され、馬乗りされる。
俺の首に触れてる名字の手が酷く冷たくてそれが心地いい。
苦しさに目を閉じた。

「毎回じゃん!!」

「ん、うん…だな」

気にしてないように返す。
そうじゃないと意識が飛びそうで、飛びそうで。
ポタリと、俺の頬に落ちた冷たいものに目を開く。
空は晴れている。
鬱陶しいほどの快晴だ。

じゃあ、なんだよぃコレは……
「何で、何でっ」

「……」

目の前のコイツはいつもみたいに笑ってなかった。
苦しそうに顔を歪めて、あぁ、辛そうだなお前。
不意に泣きたくなった、顔を苦しさ以外で歪める。
辛いのはどっちだろうな?


嫌いと言われ続けるお前か
首を絞められ続ける俺か


死にたがりのお前か
嘘吐きな俺か

どう思うよ?
なぁ、泣いてないで答えてくれ。


「嘘でもいいのにっ好きって言ってよ!!」

「ヤダよっ、好きって言ったらお前絶対死ぬだろぃ!?」

そんなの知ってるよ。
お前が死にたいことだって、俺のこと好きなことだって。
だって、俺もお前のこと好きだもん。
お前を俺の口で殺すぐらいなら、ずっと殺される方がマシだって思ってたから。

「それなら、俺が死ぬからっ」
「………」

手の力が緩んだ。
その隙に名字を俺の上から退かして、抱きしめた。

あ ぁ、真正面から向かい合うのは初めてだっけ?

「好きだから、死なないでっ頼むよ名字……」

「う……うぇっく…ひっく……ぅ」

お互い不安だったんだよ俺等。
自分の心も分かんなくて、人の心なんて尚更、複雑すぎてさ。

お前が死ななくて良かったってマジで思える。
一緒に生きていこうとは言えねえけどさ、一緒に歩こうとは言えたんだ。
少しずつ解いていこうぜ、俺等の複雑な恋心。

「丸井……好き」

「ん、知ってる」

いつか、全部解けて、俺の首の痣が消えたらいいなって、青空を見ながら俺は思った。

長い長い心理戦の終わりを告げる様に、鳥が鳴いた……


執筆者:ヨコシマヤ

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