揺れるしっぽに首っ丈の彼 | ナノ

私は早く漫画が描きたいんです。


 時刻は18時前。丸井くんは友達の家にいる弟を迎えに行くそうなので、二人より先に帰るそうだ。私は玄関まで丸井くんを見送っていた。

「今日は急に来て悪かったな、すげえ片付けさせちまったし……」
「いいよ、謝らないで?普段から片付けてない私が悪いから」

 とは言いつつも配慮してくれない柳くんと、仁王くんの家にしてくれないの仁王くんが一番悪いけどな!なんて心の中で悪態を吐く。

「いやいやマジで俺が急だったせいだし悪く思うなよ!あ、あとさ、」

 とつぜん視線を逸らした丸井くん。
 何やら複雑そうな顔で目を泳がせている。

「うん?」
「お、俺もさ名前で呼びてぇんだけど、その、苗字のこと」

 少し頬が赤くなっている。丸井くんは人の名前呼ぶのにそんなに照れるタイプなのか!かわいいな丸井くん!
 きっと切原から赤也に変わった時なんて照れて照れて仕方ないな!仁王から雅治とか、どれだけ恥ずかしいのでしょうか……!
 丸井くんも受けありです!!(※漫画化決定)

 いやいや、自分ワールドに入っていないで早く承諾しよう、私。

「もちろん、いいよ!」
「お、おう……名前!」

 返事がてら私はにこりと微笑んでおく。ああ〜今、頭の中で妄想爆発してる。部屋に戻っても勉強どころじゃないんだけど。と頭悩ませている私にさらに丸井くんは言う。

「えっとさ、名前も、そのー名前で呼んでくんね?」
「ブン太くん?」
「お、おう」

 というわけで私たちは互いに名前を呼ぶことになりました。
 満足げな丸井くんが、じゃあな、と手を振って家を出た。

 いやあ、友達になってすぐに名前で呼び合いたいなんてやっぱりイマドキ男子は違うね!関係あるのか知らないけど。
 とにかくそんなフレンドリーなのに名前呼びで照れちゃう丸井くんは本当に可愛いと思う。マジで。だって恥ずかしいのにそれでも友達なら名前がいい精神っていうの?ああ可愛い……。

 おや?私さっきから可愛いしか言ってないぞ?ボキャ貧って柳くんに言われちゃうな。いや、柳くんはボキャ貧なんて既にボキャ貧な単語使わないよね。それこそ怒られるよ。

 とか考えながら階段を上る。扉を開けると同時に柳くんが声をかけてきた。

「名前で呼び合いたいと言われた確率、79.8%」
「へっ……?」
「違うか?」
「いや、合ってるけど」
「やっぱりのぅ」
「それにしても丸井くん可愛すぎるんだよ!だってさ……!」

 先ほど感じた興奮を2人に丸々伝えれば、仁王くんは笑いだした。柳くんはノートに何やらメモしている。

「しかし、苗字。丸井が友達になってすぐに名前を呼び合いたいタイプだとお前は思っているが、それでは俺たちをどう説明するんだ?」
「照れすぎて言い出せてないんじゃない?」
「都合のいい頭だな」
「いや、もうそんなことより今すぐ描きたい!溢れるまる……じゃなくてブン太くん受け!」

 私は引き出しからノートを取り出す。机の上でノートを開けたら軽く叩かれた。

「絵を描くな、勉強をしろ」
「えー」
「ただでさえ、お前は少し寝ていたんだぞ」
「ネタだけ書き留めたい!ほら、柳くんも即座にメモするじゃん?」
「メモするだけだぞ」

 わーい、珍しく柳くんに許されたぞー!説得するとか私強い!!嬉々としてノートに頭に浮かび上がったことを書いていく。

******

 期末テスト最終日は七夕でありポニーテールの日だった。帰ったら、我慢し続けた(私、超えらい)ブン太くん受け漫画を描くんだああ!!
 って思っていたら帰宅途中に柳くんから長文のメッセージが来た。

『今日は七夕であり浴衣の日であり、そしてポニーテールの日でもある。ちなみに提唱したのは〜(中略)。
つまり、これがどう言う意味だかわかるな?馬鹿なお前のために書いておくが、神崎名前と花京院櫻子の浴衣姿のイラストを描けということだ。ポニーテールの日にポニーテールである彼女たちを描かないという選択肢はないだろう。楽しみにしている』

 もう、自分で描いてくれよ。そうだよ、柳くんいつも人に描け描け言うけど自分で描いたらいいじゃんか!!

『自分で描いたら?』
『断る』
『なんで?』
『俺は生産者としてではなくあくまで消費者として楽しみを得ているのだ。苗字は……(省略)』

 とりあえず面倒になったので『わかった!わかったから!描けばいいんでしょ!!』って返事しておいた。絶対これを狙って長文のメッセージ送りつけてきてるじゃん。

 帰って早速、作業に取り掛かった。柳くんたちは19時まで部活らしいのでそれ以降にツノッターにあげたら反応があると思い、そうする。

『やはり神埼名前と花京院櫻子は浴衣が似合うな』

 と、柳くんからリプがきた。先にお礼を言ってくれますかね!?一応リクエスト受けたようなもんだからね?

『先に言うことはそれなのか!!』

 そう返信した直後だった。ピロンッとまた私のスマホがリプを受け取ったことを告げる。

『アクアマリンちゃんは描かんの?』
『ポニーテールの一音ミカを忘れとるで』

 お前らなああああ!言えば私が描くと思っているな?!ああ、もう!いいですよ!ぱぱっとなら描いてやろうじゃないか!

 ということで白黒だが、アクアマリンちゃん(ポニーテールver)と一音ミカの浴衣姿を描いた。
 アップしたら光が『色は?』とか言ってきやがったので思いっきり雑にベタ塗りしたやつを「ZENZAI」宛に送りつけてやる。

『これでいいんだろ!!!!塗ってやったぞ!!!!こら!!!!!』

 はあ、帰ったらブン太くん受け漫画を描こうと思っていたのに気づけばもう10時前ですよ……。
 そしてこの時間になると、あの誘い来るんですよねえ。と思ったのも束の間、仁王くんから『通話じゅえる』とグループの方にメッセージが届いた。

『君たちに時間を奪われ続けた私はこれから漫画を描きます!以上!』

 いつもは10分以上返事に時間を空けている私が速攻で返した。

******
あとがき
 読み返したあと、続き書くか〜って気持ちでメモアプリ開いたらこの話が残っていました。(20180912)ってあるのでその日に書いてるはずですが日付は(20210702)にしときます笑

(20210702)執筆


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