その手をのばした。 | ナノ


▼ 良いところなんて

そんな私たちを見て、周りの人々は何故あんな彼女といつまでも柳は付き合っているかなどと口にする。

それは、私だって聞きたい。何が良くて私なんかを好いているのだろう。
口が悪くて、無愛想で、取り柄のない私に良いところなんて一つもない。友達だって片手で収まるどころか指一本で足りるし、本当に何処が良いんだか。

唯一の友達に聞いてみた。私の良いところは?と。

「えー、名前の良いとこ?」
「うん、私にある?」

すると、考える様子もなく即答した。

「無い」

私が言えることではないがひどいやつだ。

無い。確かに自分が一番分かっていることだが、直接言われると本当にないものなのかと思う。

「だって、あんた学年一口悪いやつで通ってるんだよ?このマンモス校でだよ?」
「繰り返すな馬鹿。あんたも十分悪い」

名前程ではないね〜と言った友達を睨んだ。だが、私のようなやつと友達でいられるのはこれくらいズバッと思っていることを言えて、多少は口が悪い子でないと無理なのかもしれない。

「まあ、友達でいてほしいならいてやるから」
「なってと言った覚えない。自意識過剰」

本当は友達でいてくれていることは嬉しいのに、やはり友達でも素直にこれからもいてほしいと言えない。

「私は名前が内心ではいてほしいと思っていることは分かっているから」

そう見透かされてしまうと、恥ずかしさからか苛立ってしまい、またキツい言葉が口から出る。

「マジで言ってんの?なわけないでしょ、気色悪い」
「あはは、可愛いやつめー。きっと、柳も分かっているから好きなんだよ」
「本気で気持ち悪い。絶対違う」
「さあ、それはどうかな?」

そう言いながら、柳の方を見た友達に溜息を零した。
そして、私も彼の方へ視線を向けるとバチッと目が合った。いつもの癖で睨むと、微笑まれて、私はさらに眉間の皺を深くしたのだった。

「なんて形相で彼氏睨んでんのよ」
「無条件反射」
「いや、せめて条件反射にしなさい」

私には人を睨んでしまう先天的反射があると言えば、呆れて物も言えないというような表情であんたは何の動物だよと呟かれた。
そりゃあ、私は人間だから動物だ。サル目(霊長類)ヒト科の動物であり、決して他の動物でなければ当然のこと植物でもない。
そんなことをブツブツ吐くと、到頭完全に呆れられたのか友達はわざとらしく大きな溜息をついた。

「あんたって口悪いだけでなくひねくれているよね」
「ひねくれていて何が悪い。私は普通にしているだけ」

それも、ひねくれているの。
そう言いながら指一本で収まってしまう、唯一の友達は席を離れていった。

良いところなんて

(見つかりもしないんだろうな)

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