その手をのばした。 | ナノ


▼ 完璧な彼と口の悪い私

私の彼氏である柳蓮二は、身長は181pもあり、すらっとしているのにも関わらず、部活で鍛え上げられた腕や足にはしっかりと筋肉がついているなんてスタイルが良すぎるやつだ。しかも、テストの合計点は必ず上位で、前回のテストは一位だった。頭も良く、生徒会に所属している彼は書記をしていて、字も達筆だ。そして、気が利いて優しいので性格も良い。
これで理解していただけただろう。彼に欠点がなく完璧なことが。

そんな出来過ぎた彼に、何一つ勝てないことに腹が立つ。
だが、私はそんな完璧なところに惹かれてしまい、大好きになってしまったのだ。

私は別段、容姿が良いというわけでなければ頭も良いわけではない。それに、気が利くような行動もできないし、むしろ、かなり口が悪いので性格が悪いと見られている。しかも、運動もそこまでできるわけではない。

完璧な彼氏には不釣り合いな私だが、好きなものは好きだし、あちらが好いてくれているというのなら彼女でいたい。

…とは言ったものの、口が悪く素直になれない私はキツいことを言ってしまったり、強く当たってしまったりする。しかし、そんな態度でも柳は優しく接してくれるし、私がどれだけ暴言を吐こうと全く怒らない。

今の対応ではいけないと分かっている。もっと、素直で優しい言葉遣いでないと、いつ離れてしまうかわからない。
これからも隣にいたい。嫌われたくない。
でも、うまくいかない。

今朝だって、思ってもいないことを言ってしまった。

「おはよう、名前」
「何でいんのよ」
「朝練がないから迎えに来たんだ」
「反対方向なのに朝から暇人ね。私と行きたいからって馬鹿じゃないの」

朝から会えて嬉しいのに。
家が離れているのにわざわざ来てくれることもすごくすごく嬉しいのに。

こんなことしか言えない。

「乗る電車は同じだ。それに、彼女と一秒でも多く一緒にいたいと思って何が悪い」

柳はよくマンガや小説でしか見かけないような、所謂、キザでクサい台詞を言う。
恥ずかしいったらありゃしないのだが、照れている姿を見せたくないので、また真顔でひどい受け答えをしてしまう。

「悪いなんて言ってない。それに、朝からそんな気持ちの悪いこと言うのやめて」
「フッ、とりあえず行こうか」
「話聞きなさいよ」

手を握られるが、振り払いながらも後についていった。それから、学校までの道中もいつも通り、私のキツい返答での会話だった。

完璧な彼と口の悪い私

(今日とて変わらないか…)

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