▼ プレゼントは。
「あれ?…仁王くんいないなあ…」
私は屋上へと来ていた。現在、3-Bは音楽の授業なのでかなりの確率でここにいるかと思ったのだが予想が外れたのだろうか。
はぁと溜息をつきながら手入れがよくされた屋上庭園の花を見つめた。
今日こそ、二人で話そうと思ったのにな、と心の中で呟く。
「どうしたのですか」
いきなり声を掛けられた。振り返るとそこには柳生が立っており、微笑みながら近づいてきた。
「柳生くんこそ、優等生がこんなところでサボっていてもいいの?」
「今日は特別です」
「そ、そうなんだ…」
サボることができる特別な日が柳生には存在するらしい。いまいち分からないが、それはさておいて、ダブルスのペアである彼なら仁王が今どこで何をしているか、見当がつくかもしれない。そう思って尋ねてみた。
「ところでさ、仁王くんしらない?」
「仁王くんですか?わかりませんねえ。何か御用でもあるのですか?」
「うん…まあ、ちょっとね…」
口を濁すと、困ったような表情をするものだからどうかしたのかと聞いた。
「失礼ながら、彼のことがお好きなのでしょうか?」
「んー…まあね」
「仁王くんはあまりおすすめできませんよ」
柳生がそう言う理由が分からなかった。確かに仁王は偶に悪い噂を聞くこともある。実は女遊びをしているという一方で女は大嫌いという話もあったり、冷たいだの、気まぐれだから長くは付き合えないと言われていたりもするし、話は色々だが、私は仁王がそういう人ではないと知っている。
ああ見えてすごく優しくて、人のことを気遣っていたり、そうと思えばイタズラ好きの子供らしい一面もあったり、そんな仁王くんが私は大好きだ。
それを言うと柳生は慌てた様子で少し顔を背けた。
「…ちょ、待ちんしゃい」
そう言いながら姿を現したのは仁王で、少し頬が赤くなっているように見えるのは気のせいだろうか。
「そんなん言われるとは思わんかったぜよ」
「もしかして照れてる?予想外?」
「まさか、俺と気付いとったんか?」
「もちろん。本人以外にあんなこと言わないよ」
「一本取られたのぅ。見事ナリ」
仁王にそう言われたことが嬉しくてにこりと微笑むと手を差し出してきた。
「まだ、何かあるんじゃろ?」
「さあ〜、何だと思う?」
ニヤリとお互いに口角を上げるものだから、可笑しな気がして吹き出せば仁王も笑った。
「そうじゃの…希望はお前さんがいいきに」
「仁王くんがもらってくれるなら、いつまでも」
「ずーっと側にいんしゃい」
そう言った仁王くんに腕を引かれすっぽりと体が収まると、先ほどまでは少し速かった脈がよりいっそう速まった。
「…ねぇ、仁王くん」
「なんじゃ?」
「誕生日おめでとう」
来年も祝えると良いな。
そう呟いた私に仁王はキスを落とした。
誕生日でないのに、私もプレゼントをもらえたようで嬉しかったことは言えなさそう。
(で、プレゼントはないんか?)
(え?私じゃないの?)
(用意しとるんじゃろ?)
(仕方ないなあ。はい、これ)
(……俺は真田じゃないぜよ)
(もう少し食べた方がいいよ。それに焼肉好きでしょ?)
((焼いた肉だけ………))
仁王、初めて書いたのでドキドキ。
キャラとか口調とか不安。
(20121204)執筆
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