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▼ クールに決めたい バレンタインSS

※本編後なので付き合っています。

 バレンタインデーがやってくる。もちろん彼氏である柳にお菓子をあげるのだが、いかんせんお菓子作りなんてやらない私が上手にできるわけもなく、散々な目にあっている。
 ご飯は作るが、お菓子と要領が違うので苦戦していた。なんとか完成した抹茶トリュフは自己評価30点と言ったところ。
 買った方が早いという結論に行き着き、いやしかし手作りのをあげたいという気持ちもあり、詰まるところ手作りと市販のものを両方用意した。

 そうしてバレンタイン当日。柳の家で会うことになり、私は二つのお菓子を手に雅趣に富んだ柳家の門をくぐった。

「早速なんだけど」

 ああ、と相槌を打つ柳はきっと何を貰えるのか分かっているのだろう。私はとりあえず手作りの方を紙袋から取り出した。

「あんまり上手く作れなくて、美味しくないけど」
「名前が頑張って俺のために作ってくれただけで十分だ」

 柳はそう言いながら、そっと包みを開けた。中には自己評価30点の抹茶トリュフが4つ並んでいる。

「あ、あとね、これ」

 私は柳が手作りトリュフを食べる前に市販のお菓子も差し出した。ちなみにこれは最中を用意した。(チョコが被るとくどいと思ったから)

「あんまりイマイチだから市販のも買ったけど、手作りも渡したくて、でも、柳に美味しいもの食べてほしくて……」

 小っ恥ずかしくて、私は言い淀みながら目を逸らす。視線の先には猫が丸まっていた。すると、隣から「フッ」と小さな笑みが聞こえてきた。

「とても、名前らしいな」
「そ、そう?」
「ああ、そういうところが可愛いと、俺は思うぞ」
「へっ?! べ、べつに可愛くなんて……!」

 幸せそうに目元をさらに細めた柳に頭を撫でられて、もう私は何も言えなくなってしまった。やっぱり柳にはかなわないな。

(~20220306)執筆

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