今日は七夕、奇跡の一つや二つぐらい起きてもおかしくない日。
でも、結局は泣く羽目になるんだろう。

桐也君と離れてから一年が経った。
会いたいなんてわがままだなぁと笑ってしまう。

窓の外を見ると雨が降っていた。
優しくなぞる様に指を窓に当ててみる。
なんだか今日は無性に寂しい気がして…。

ふぅとため息をついてみてヴァイオリンをじっと見つめる。
それから最近練習中の曲の楽譜に目を通していると携帯が鳴った。
誰だろうと思って携帯をみると桐也君からだった。
慌てて電話に出た。

『も、もしもし?!』

「もしもーし、そっちはどう?元気にしてた?」

『う、うん。大丈夫!!桐也君は?』

「俺も元気にしてたけど、あんたが元気そうなら良かった。」

『私も桐也君が元気そうで良かったよ。』

「そういや、今日は七夕だろ?そっちは天の川見れんの?」

『え…』


窓を見ると少しずつ雨が弱くなっていた。
けれど未だに止む気配はない。


『雨が降っちゃってて…、天の川見れないの。桐也君の所は見れるの?』

「俺の所は都会すぎてあんま星は見れないよ。そっちは綺麗に見れると思ったんだけどな。」

『……うん。』

「あれ、なんか#蒼衣#元気なくない?」

『え?そんなことは…』


言いかけて言葉に詰まった。
だって否定ができなかったから。
会いたい、それだけが頭の中でぐるぐる渦巻いてわけがわからなくなりそう。


「#蒼衣#、俺に会いたい?」

『…!!』


そう言われて顔が熱くなった。
読まれた?口に出してたかな?
なんだか恥ずかしい…こんなのまるで子供みたいじゃない。

「なぁ、#蒼衣#。」

『……たいよ。』

「え?」

『私は、桐也君に会いたいよ…会いたくて会いたくて…でも、それは私のわがままだからずっと黙って来たけ、ど…やっぱり…声聞いちゃうと…会いたくなっちゃうよ。』

「……。」

『ごめんね、多分きっとこれは私のせいだから…わがままなんて言っちゃダメなのに…切るね。』

きっと今日は織姫も彦星と会えない。
私と同じだ。
今なら織姫の気持ちになれるはず、それを今味わっているから…バカだなぁ私って


「#蒼衣#。海岸通りで待ってるから」

『え…?』今なんて…

「んじゃあ、ちゃんと来いよ?」


ぶちっ


混乱状態のままそのまま走り出す。
外はもう晴れていた。
どうなってるの?何が起きてるの?
とりあえず海岸通りに着く。
それから、キョロキョロと辺りを見回す。
でも周りは海と街頭だけがあるだけで
やっぱり、会えるわけないよ…期待して損し…

後ろから誰かが私の肩に腕を回した。
え?


「お嬢さん、なんでそんな寂しそうな顔してるの?」

『……!!!』


見慣れた顔。
いつも近くにいた姿、声。

『き、…』

すっと優しく私の唇に指をあてた。


「俺に会いたかった?」


こくんと黙ってうなずく代わりにたくさんの涙が溢れ出した。
















流れ星の涙





どうか、今日だけは愛おしい人に会わせてください。










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そのまんま七夕企画で載せたものです。
拍手ありがとうございます。