緊張する足取りで式場へ向かう。
大丈夫かな、失敗とかしないかな?
不安を抱えながら係りの人と一緒に式場に到着。
「お綺麗ですよ。」とにっこり係りの人は微笑んでその場を離れていった。
それから何分かして私の父がやってきてそれと同時にアナウンスが中から聞こえた。
アナウンスが終わると盛大な拍手と扉が開く。
沢山の人に注目を浴び、ふと正面をみると隆文くんがいた。
優しく微笑んでいる隆文くんはいつもよりカッコよくみえて鼓動が早くなった気がした。


今思えば結婚なんて昔の自分だったらきっとありえない事だっただろう。
まだあの頃は私も子供で、結婚という未来なんかよりその時の時間が楽しく感じられたからそんな事は私達の隙間に入るかは分からなかった。

でも、私達も大人になってお互いの事を知ってなんでも分かち合うような仲になり結婚という道を選んだ。
その時に告げられた言葉はなんだかむず痒くて、でも幸せで凄く嬉しかった。
だから、私はずっと隆文くんの隣にいたい。これからは、支えられていくだけじゃなくて私も隆文くんを支えていきたいと心から思った。


そう考えていると気がつけば隆文くんの目の前まで来ていた。
隆文くんは真剣な顔をして手を取った。

「なんか…こういうの照れるな…。」

そう隆文くんは顔を赤らめながら私に言った。
そんな風に言われると私も恥ずかしいんだけど…
私が下を向いてしまうと隆文くんはビシッと私の額にでこぴんを食らわした。


『痛っ…』

「ばーか、下向くな。折角の可愛い顔が見れなくなるだろ?」


いつものようにニヤリと意地悪な笑みを浮かべる隆文くん。
痛さと恥ずかしさが交互になり顔がどんどん赤くなった。
すると真面目な顔して隆文くんは「ほら、行くぞ。」と言った。
私は黙って頷き隆文くんの隣に並ぶ。
目の前に立っている神父様が優しく笑いかけてくれて少しだけ緊張感が和らいだ。


「蒼衣…愛してる。」


歩いて後少しのところで隆文くんが珍しくというより初めてそんな言葉を口にした。
ちらっと隆文くんを見ると顔を真っ赤にしてそっぽを向いていた。
なんだかそれがとても愛おしく思えて『私も…愛してます…。』と答えた。








囁き合いの呟き合い





これからも一生あなたについていきます。




おまけ


「にしても、お前のウエディング姿…」

『なに?』

式の帰り手を繋いで歩いて帰っていた。
もう夜は遅くタクシー乗り場まで歩いていた。


「孫にも衣装って奴か、あれは」

『失礼な、どれにするか凄い迷ったのにー』


あれは私の母と父で選んだもので最終チェックは隆文くんにしてもらった。
あの時はなぜか目を逸らされながらOKをもらったんだけど…どうしたんだろ?


「まぁ、でも…綺麗だったんだし良かったじゃないか?」

『う、うん!本当にあのドレス綺麗だったよね!また着たいなぁー』

「ばーか、一回だけでいいんだよ。何回も着られちゃたまらん。」

『そう?』

「それに…、ドレスなんか着なくても…お、お前は十分綺麗だよ。」


いつも以上に真面目な顔して言うからなんだか顔が熱くなった。
それと同時に下を向いて歩く。


「どーしたー?照れてんのか?」


意地悪っぽく言う隆文くん、相変わらずだな…。
すると隆文くんは急に止まった。釣られて私も止まる。

『?どうしたの?』

顔を覗こうとすると同時に口を塞がれた。
甘くてなんだか溶けそうで深い味。
息ができないほど深く、そして長いキス。
ふっと唇を離されて私は少しバランスを崩しそうになった、けれどタイミングよく隆文くんが私を支えて強く抱きしめた。


「これからも、ずっと、ずっと、一緒にいような。」


そう優しく言われて私もにっこり微笑んで『うん。』と頷いた。
どうか、この一時がいつまでも永遠に続くと願って…





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6月の花嫁企画で載せたものです。
拍手ありがとうございます。