ある何の変わりもない日常的な昼間。ぽかぽかと日差しが麩からこぼれ落ち、そのせいで私は睡魔に襲われていた。ああ…溜め残している書類に目を通さなければならないのに…。そう言っても身体というものは正直なもので私の意識は少しずつ少しずつ確実に遠のいていた。あと…5分くらい…。そう言って睡魔に意識を預けようとしたとき、ゆっくりと麩が開いた音がした気がした。誰か入ってきたのだろうかと目を開こうとするが中々開かない。諦め、完全に意識を手放してしまった。それから…何時間が経ったのだろう。気づけば周りは暗闇に満ち、頭に感じる柔らかい感触と温もりが心地よくもう一度眠りこけてしまいそうな感覚だった。もう一度だけ…あと少しだけ…と言いたくなるが、いい加減この重い体を叩き起して夕飯や風呂の支度をしなければならない。もう一度だけ…欲が溢れては意識を手放そうとする。ふと、何やら頭に重いものが乗っかると思えばゆっくりと撫でられるそんな感触がした気がした。いい加減自分の異変に気づきそっと目を開ける。完全に暗闇でありつつも、明らかにいる人物が私を膝枕してて、膝枕と頭を撫でるなどのサービスが私に行われていた。粗方このことをするのは、うちのおじぃぐらいしかいないもので、きっとこれはおじぃの仕業に違いないと私の中で確信づいていた。相手は私が目を覚ましたのに気づいたのか、撫でる手を止めたと思えばくすりと笑う声が聞こえた気がした。

「主、起きた」

声の主から読み取れたのはおじぃではないと私の中で新たな人物が思い浮かぶ。この声は…?いい加減身体を起こし、開ききっていない目を擦る。だんだんと暗闇に慣れた私の視界は目の前にいる人物を認識しはじめる。南中し始めたのか月の光が障子を通しては人物の認識もある程度確定された。

『清光…私は、その何時間くらいここで…』

今まで私は清光にとんだ恥を晒していたのだと今更ながらに気づき、頬の熱が熱くなることも感じられているようで、今ホッとしているのは暗闇だから相手にはバレないということが救いであった。ああ…私のばかっ…

「んー…わかんない。だけど、お米気持ちよさそうに寝てたし。」

考える動作をしつつも、にへらと笑う彼の表情がどこか悪魔的でいつもよりも妖々と満ちている笑みであった。ああ…見られてしまう相手を間違えた気がする。頭を抱えながらため息をつく。麩を開けてきた場面から恐らくその時点で気づかなければならなかったのだと数時間前の自分を恨んだ。

『あの…清光…。その…まさかずっと、膝枕を?』

そう問うと即答で頷かれまた私は頭を抱え始めた。しかし、見られた相手がおじぃや子どもらであっても笑って終えることはあるが、清光に関してはどうも私の中で気を許してはいけないとそんなプライドがあった。それは何故かとよく分からないが、恐らく清光や安定の前主が脳裏にあって、私は前主よりもしっかりしていないといけないという心構えがあった。今日のこのことで恐らく信頼関係は愚か、私を必要ともしないのだろうと私の中で結論に至った。

「お米、…なんか難しい顔してる」

突然そんなことを言われ、眉間に指を当てられた。気づかぬうちに眉間にシワを寄せていたらしい。考え事をするといつもすぐ出てしまう私の悪い癖…。

「お米の寝顔独占できて超嬉しかったんたけど…しかも俺の膝枕で気持ちよ〜く寝てたしね。」

先ほどとは違う笑みに私は首を傾げた。嬉しい…?彼の口からそんな言葉が出るとは予想外で、思考回路が一瞬にして停止してしまった。こんなことを言われるのは人生初めてで、彼が何を言っているのかさえも一瞬ではあまり理解ができていなかった。

「また、寝るときは…俺を呼んでくれると嬉しいな。」

耳元でそう言われると嬉しいとか恥ずかしいとか思うのが正解だろうが、私の場合は驚きしかなかった。ただ自分の中で色々な感情がとぐろを巻いては表情に出てしまうのはいい加減にやめたい。しかし、清光はあまり検索せずにただ微笑むだけで、そんなに私の寝顔を独占できたのが嬉しかったのか…と自分でも思ってしまうほど彼は嬉しそうな表情をしていた。とりあえず、清光は私に失望はしていないらしく、むしろ清光が私にじゃれ始めてきたのは事実であった。信頼関係が深く築けたのは良しとするが、あの時彼はどういった表情で、視線で、私を見て、何を思って膝枕なぞしていたのかと大いに疑問ではある。そして自分の中で生まれた感情は一体なんなのかということの結論はもっと先のことらしく、何れは名前がわかるといいと強く願うのも確かであった。



それは恋と呼ぶらしい



その答えが出るのはいつ頃だろうか。もうとうに答えはわかっているはずなのに、気づいてはいけないと何となく察してしまう。ただ、清光を見る度に心が疼くのだけは気づいていた。

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無理やりな流れとキャラ迷子\(^o^)/
お蔵入りしてたので。。。

2015/01/31
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