ふと閉じていた瞼を開けばなんの変哲もない天井。暗闇に慣れたのだとそんなことを脳裏に思いながら意識を左に向けた。そういえば私は今最愛とも言えるであろう大神晃牙の家に上がり込み、そんなこんなで一つの布団で一夜を過ごそうとしているわけなのだけど。思えば数時間前、布団が一つしかないという事実を知ったのはお互い夕飯を食べた後だった。今更用意するのも面倒で、晃牙くんは気を使って離れた所で寝るといい始めそれは申し訳ないと譲り合いからの口論になりかけたのだけど、晃牙くんの愛犬レオンさんに止められ、色々とあって一つの布団でお互い寝そべっているわけです。


『(これは…眠れないやつだ…。)』


少し遠慮気味に布団からはみ出して私は、右側は床左側は布団という状況下にいる。それはもう罪悪感等々があるから。確かに、晃牙くんと私は恋仲という関係性を持っている。何が起きてもおかしくない、むしろ恋人としてすごく当たり前のことをしているようにも感じられる。それなのに悪いことをしているような、すごく居た堪れない状況で葛藤に葛藤を重ね、気づけば時計は2時を指していた。そんな私をおかまいもなく緊張させている当の本人は寝息を立て私と晃牙くんの間に挟まって眠っているレオンさんも寝息を立てていることがわかった。私も頑張って寝ないと…明日に響く!明日は早朝からレオンさんのお散歩に付いていくことになっていて大神家の朝は早いとのことだった。私も朝は早い方だけど、この状況だと眠らないままでレオンさんのお散歩コースになってしまうのはまずい。晃牙くんにも迷惑がかかってしまう、それは避けないと。もう一度瞼を閉じるけれど、心臓が意識をするたびに早く打ち体温という体温も次第に高くなっていた。おさまれ私!静かにしないとレオンさんが起きちゃう。


「お米…、寝れねぇのか…?」


びくっと身体が震えた。恐る恐る晃牙くんの方を向くといつの間にかレオンさんが私たちの間から移動し足元の方へ丸くなって眠っていた。多分私がうるさくしてたんだよね…ごめんなさいレオンさん。晃牙くんは大きなあくびをしたあと「明日に響くだろうがよ」と眠りにつくのかと思えば「もっとこっちに来やがれ」と手招いた。床に出ているのばれた。首を振ろうと思ったけど、腕を掴まれちゃこれは逃げられない。晃牙くんの傍に寄れば晃牙くんの腕の中に入ってしまう私がいる。これじゃあもっと眠れない。


『こ、晃牙くん。私が眠れない理由分かってやってる…?』


「知るか。ここで風邪引いちまったら俺様が気分悪ぃだろうが。」


うう…ごもっともでございます。晃牙くんの体温と香りに意識を飛ばせば再び鼓動が早まる。悪化している。さっきよりも悪化している。ふと晃牙くんの方へ顔を上げると目が合う。あれ、起きてる。不意打ちに目が合ってしまい、目が泳いでしまう。


『や、やっぱりダメ!!緊張しちゃって…』


離れようとするも、晃牙くんの腕の力が強まった気がした。逃げられない。これは逃がしてくれないという答え?でも、ここで離れないと私の心臓が!というか色んなものが壊れる!


「さっさと寝ろ。」


頭に晃牙くんの手が乗っかり、優しく頭まで撫でてくれた。いつもこんなことしないのに!夜だからちょっと優しいのかな?なんて思いはどこかに飛んでいて気が付いたら意識も手放してそれ以降の記憶はなく、晃牙くんの体温と優しさに意識を預けていた。






眠り姫は眠れない








やっと眠ったお米の寝息を確認してから、大きくため息を吐いた。まさかこんなどうでもいいことで緊張なんかしやがって、しかも眠れない行動まで起こしやがって。こいつは阿呆なのかと考えたのは何度目かと眉間に皺ができるのがわかる。


「あんま可愛いことすんじゃねぇ…」


呆れるほど間抜けな寝顔をするお米の唇に唇を落とす自分に呆れ、体温が高まっているのはお米のせいなのか自分のものなのかはわからず、ただ沸々と湧き上がる動悸を感じながら瞼を閉じた。





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この前友人の家に泊まったら緊張で眠れなさすぎてオールしてしまったので、これが大神晃牙だったらいいなって思って気が付いたら大神晃牙が添い寝してくれたって言う話。




2016.06.16
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