深夜誰も起きていない時間になるべく廊下に音を立てないようこっそりと歩く。本当は今すぐにフェルの部屋に潜り込み、寝顔を堪能してからフェルが眠るベッドにダイブしたい所だが先約があった。
私は目的地の部屋である前に立ち軽くノックをする。扉越しから小さな返事が聞こえて扉を開けばルカさんがお茶を淹れて待っていてくれた。
今日はルカさんからお茶会に招待されていた。
本来なら午後の三時にお茶会をする予定だったのだが、皆で海に行っていたので断ってしまった。罪悪感で沈んでいると「時間をずらせば良い」とルカさんは気を使って提案してくれた。ルカさんのお陰で夜のお茶会ができるのだ。

『今日はフェルと初めて海で遊んだり…』

今日の出来事をルカさんに報告すると良かったですね。と少し悲しい笑顔を浮かべるルカさんに気づきはっとして謝った。

「まぁいいです。私も研究に専念したかったですから…それにお嬢様ももみじが来てくれて最近は本当に笑うようになったんですよ。」

ニッコリ微笑むルカさんに私は涙が出そうになった。フェルに出会えて良かった。それにそう喜んでくれてこちらも嬉しい。

「では、そろそろ今日の本題に…」

ごそごそとルカさんは懐から封筒を出した。私は待ってましたと言わんばかりの笑みをルカさんに向ける。今日のお茶会の目的。ただお茶を飲むだけではない。今日はもっと特別な理由で設けられたお茶会だ。私は差し出された封筒を受け取り開ける。そこには何枚かの写真があって写っているのは全てフェリチータばかりだった。

『…っはぁ!!いいですねぇ!私もうこれでご飯は何杯でもいけそうな気がします!!』

フェルの輝かしい写真を一枚一枚手に取り舐め回すように眺める。因みにちゃんと指紋を付けないよう手袋はしている。フェルの顔(写真だけど)に汚い指紋がついたら嫌だし。それに一応これはルカさんのものだし…。

『この…白いワンピースも、最早空から舞い降りた天使のように見えます!!なんと神々しい…』

写真を前に土下座したくなった。今は冬場だからこんなに肌を露出したフェルは見たことはない。だから今日の海は私にとっていい思い出になった。
何回かルカさんと文通をしていてその時に写真を何枚か貰ったけど、余り露出する写真はない。フェル曰くルカさんに撮られるのが嫌らしい。この写真はレア物でルカさんが熱心に頼み込んで撮らせてもらった写真。ルカさんの邪魔をしたのだろうか、何枚か男の写真が紛れ込んでいた。こう見ると本当に苦労したのだなと身に染みる。
でも…ルカさんや他の男どもはフェルの私服姿を見てて、その恰好で一緒に出掛けたりしているんだよね。フェルの毎日はずっとスーツで休日でも私服を着ないらしい。いつどこで仕事が入るかわからないからずっとあのままの恰好だと本人から聞いたことがあった。
ファミリーとしての忠誠心はとても立派だ。けれどせめて一日だけでもフェルの私服を拝んでみたい。ちょっと我儘すぎだろうか?

『私もフェルの私服姿、堪能したいです。いつでも見れるルカさんは羨ましいです。』

写真を見ながらぐったりと項垂れているとくすりとルカさんは笑った。と、何か思いついたのか手をぽんと叩く仕草をしてニッコリと微笑んだ。

「それでは今度フェデリカドレスに行きましょう!」

フェデリカ、ドレス?ドレスってことは洋服屋さん?そのキーワードを頭の中で並べるとはっと私は気づいた。それにルカさんはふふふ。と企みといった微笑を浮かべて席から立ち上がる。

「もみじもお嬢様の私服を選んであげればいいんです!そしたらお嬢様の私服姿を見れるでしょう?」

その素晴らしい提案に爽やかな気持ちになる。先ほどまでの黒いどんよりとした気持ちは何処かへ消えていて一筋の光が見えたきがした。ルカさんがまるで救世主のように見える。

『ルカさん!!それ素晴らしいです!!』

ガタッと同じく私も席を立ってルカさんの手を握った。それに黙って頷くルカさん。本当にいい人が味方になって嬉しい限りだ。幸せすぎて生きるのが怖くなるけれどフェルやルカさんのためなら何でもしよう。

「では、今度のお嬢様の休日に。ふふ、楽しみですね。」

優しく微笑むルカさんに、はい!と明るく返事をした。その夜は紅茶がなくなってもフェルトークを朝までした日だった。徹夜がこんなにも楽しいだなんて人生初めてだわ。













真夜中クレイジー








ルカさんとのフェルトークは語り合ったら止められないの。