廊下を歩いているとアップルパイの匂いがした。
その匂いに辿って扉を開く。
そこにはやはりあいつがいて真剣な顔をしながら焼き上がっているアップルパイと睨めっこをしていた。

「おい、フェリチータ。美味そうなの作ってんじゃねーか。俺にもくれよ。」

そう言ってアップルパイに手を伸ばすと目の前にあったアップルパイが視界から消えその代わりにあいつの睨む顔が映った。

「なんだ?俺にくれねぇのか。」

さっきっから一言も喋らないフェリチータにふつふつと何故か腹立たしく感じる。全く何が気に入らねぇんだ。

「おい…、言いたい事があんなら言えよ。」

そう言うと『…今日なんの日か知ってる?』とフェリチータは言った。

「…今日?」

何の日だったけか?誕生日、でもねぇし…なんかの祝いじゃねぇよな。
頭の中でぐるぐると回るモヤモヤ。余計に腹立たしい気持ちが込み上げる。一体なに考えてんだ?

「んな、回りくどい事言ってねぇでさっさと言えよ。」

気になってしょうがねぇなんてより、今は凄く腹が減った。朝から何も食ってない体はかなり答える。

『…ドルチェット・オ・スケ ルツェット 』

「???」

何だそれ。お菓子?イタズラする?こいつは喧嘩を売ってんのか?
生憎ドルチェなんて、んなもん持ってねぇし。
それに菓子ならこいつが持ってるわけで…

『今日は世間で言う、ハロウィンていう日なの。だから……』

こいつは顔を赤くして目を泳がせながら、いきなり近づき背伸びをして触れるだけのキスを唇に落とす。

「…っ!!!」

驚きの余りに硬直する。バクバクと心臓が速くなり、身体中の体温が上昇する。

『アッシュ、お菓子…くれないから…イタズラした。』

俯いて小さく言うこいつはきっと顔が赤いんだろうな。全く、イタズラするなら顔を赤くすんじゃねぇ…。何かとずりぃんだよ、いつも。

「フェリチータ、」

『?』

「俺はお前に菓子はやらねぇが、イタズラはする。等価交換だ。」

ニヤリと笑ってフェリチータは危機感を持ったのかナイフを構える。おいおい…イタズラの意味を分かってねぇのか?自分からしたくせによ…。

「落ち着けって、良いからよ…そのアップルパイ俺にくれねぇか。」

『じゃあ…言って?』

そう上目遣いで言うのも反則だろ。はぁとため息をついてから例の言葉を言った。

















dolcetto più scher zetto
(菓子をくれてもイタズラするぞ。)







(…私…急に用事が)
(まあ待てよ、イチゴ頭。)
(ア、アッシュ、離して)
(いいや離せねぇ、仕返ししてからだ。…って言ってももう離さねぇけど。)





-----------
ハロウィン出遅れたーっ!!あー…やはり睡魔には勝てませんでした。
あ、タイトルは言うまでもなくトリック&トリート(イタリア語)です。ggrました。
でも文法合ってないかも…>< 訳もこれ合ってるんですかね…。誰かイタリア語教えてください。
すみません、相も変わらず駄文ではありますが、温かい目で見ていただけると光栄です。
ありがとうございました。



2012.11.01



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -