ゲームでよくあるような、漫画であるようなありがちな話を私は知っていた。

姫が魔王に囚われて、勇者が助けに行くという冒険。そして結末は必ず勇者が魔王に勝つの。
そんな見えすいている面白くない結末。
けれどやはり現実離れしすぎている、そんな理想のかっこいい勇者なんていないし、か弱いお姫様なんてもう実在しない。だから私にとっては縁のないお話だった。

私の名前は、勇者。
性別は、勇者だからと言って男と思ったら大間違いだから列記とした女。
なぜ私の親はこんなふざけた名を私に与えたのだろう?
もっと女らしい名前が欲しかった、けれど今の私の性格からすれば合っているのかもしれない。
私は、この国の第一王子の護衛として女剣士となった。
嫌いでやっている訳ではないの、むしろ自分に合っているとさえ思っている。
小さいころから剣を持たされてずっと稽古ばかりしていた。
だから友達なんていなかった。他人との接し方が今一わからなかった。
話しかけるだけで人は簡単に傷つくし、私から避けていく。
でも昔と今は大違い、何を言っても傷つかないし、何を言っても避けない。
変な奴と会った。それが、私の主。
だけど、あいつは人としてダメな人間だ。

そんな事思いながら、いつもの森の中に入って行く。
そうしなければ…あいつに会えないから、あいつと話せないから

ガサガサと森を抜ければ、小屋が一つ。
ボロボロで、今にでも壊れそうな脆い小屋。

『ノックはいらない。』

扉に貼ってある張り紙にそう歪な文字で書いてあった。とは言ってもこれは私が書いたのだけれど。

「ただいま。」

入れば、一人の少年が本を読んでいた。本から目を離さない状態で口を開いた。

「あれを早くよこしてください。」

それでも、敬語になっているつもりなの?

「はい、どうぞ。それだけの為に、何時間並んだことか…。」

「ありがとうございます。」

棒読みで彼は、そう答えた。
私が苦労して並んで奪い合いをして手に入れたものは…。
それは、最近村で流行っている【勇者さん】という本。

センスのセの字がないくらいのつまらなさそうなタイトルだけれど読むと凄く面白いという評判。
物語は、よくある魔王に囚われた姫を助けに行くという話らしい。
いつもこいつから語られるけれどまったくもって面白いとは思わなかった。

「何よ…そのお礼の仕方、あんたは何様なの?」

「え?お姫様です。」

はぁ。とため息をつく。
彼は“おかま”とかそういう分類ではない。
何故か両親は女が欲しかったからという理由で名前を「姫」と名付けたらしい。
普通女が欲しかったからっと言ってそう名付ける?
私と似たような感じだけれど、でも仮に第一王子なのだからちゃんとかっこいい名前を付けるべきだ。けれど彼は彼で自分の名前を気に入っているらしい。
私の主は本当に変な趣味をしていますこと…。

「まぁ、そんな事は良いから読んでなさいよ。私は城に戻って姫の代わりに行かなきゃならないから。」

「はい。じゃあ、僕は楽しんでいますね。」

「…あんたの護衛なんてもう嫌だ。」

扉を強く閉めたかったけれど、壊れる恐れがあるのでそっと閉めて走って城までかけた。

そう、姫は城の第一王子。
そして、私は彼の護衛の女剣士。
何故国の王子が古びた小屋に住んでいるのかは理由があった。

彼は今家出中だった。

「両親と喧嘩をして家出をしたい。」と王子は私に泣きついて、しつこく纏わり付くので城から少し離れた湖の畔に丁度良い小屋を発見し、そこに王子を一週間だけ住ませることにした。
そうしないと身代りになる私にも負担になるし、王子も城が恋しくなって帰りたくなるだろうから一週間という期限をつけた。

王子の恰好をする度に所々、怪しい部分もあるけれど両親がバカなだけあって今は何も怪しまれることもなく王子として振る舞っていた。
裏口から入り王子の服を探しに王室の前を通るとなぜか嫌気が指し扉を開いて見るとそこには嫌な光景が広がっていた。

「!!」

中に入ると兵士が倒れていた。
一人どころじゃない、二人、三人、四人…王も妃も。

「どうしたのですか!!!!」

声をかけても目を覚まさない、体を揺すっても目覚まさなかった。
けれど命に別状はなくただ気絶をしているだけだった。

「…誰がこんなことを」

他に誰かいるかもしれないとそのまま城中を走り回った。
すると王子の部屋に人影があった。

「誰だ!!」

私は隠し持っていたナイフを構えて王子の部屋に入った。
けれど中には誰もいなく私は外に出ようと振り返る。
その瞬間先程までなかった人の気配と殺気が私の背後から伝わってきた。
振り返ってナイフを持っていた右腕を振り上げるのと同時に黒い影は私の首に刃物を回し低い声音で私の耳元で囁いた。

「姫はお前か?」

「…!!」

一瞬背筋が凍った気がした。この男から溢れ出す殺気から私は気づいた。
私では敵わない、と。
逃げ道がないか私は辺りを見回したけれど、逃げ道は塞がれ逃げられなかった。

「姫はお前かと聞いている。」

このままでは、私は殺され王子もこいつに捕まってしまうだろう。

「私が…私が姫だ!!連れて行くなら私を連れて行け!!」

言った後私は、後悔した。
相手は、男…何をされるか分からない。

「そうか。なら、一緒に来い。」
そう言われてから私は首と頭に激痛が走り意識がなくなっていた。





その頃の姫(僕)は…

「この勇者さんカッコいいし無敵だし、やはりこの世界に足りないのはこういう物なのでしょう。そしたら僕が勇者になって囚われの身の勇者を助けに行くのに…。はぁ…誰か捕まらないかな。」

一人で、本の世界に取り込まれていた。
本を閉じて、僕は息抜きに散歩に行こうと外へ出た。
すると、森の向こうから城の兵士が一人走ってくるのが見え僕は思わず近づいてきている兵士にラリアットをかました。

「ぐぇっ…!」

城の兵士とありながら…と不安になりつつも僕は倒れてごほごほと急き込んでいる兵士を見下ろしながらため息をついた。

「…ごほ…姫様!なんてことするのですか!?こんな一大事の時に!!」

「いえ、なぜあなたは僕がここに居ることを知っているのかと思いまして。」

兵士はきょとんとしてからニヤリと笑いながら答えた。

「何故なら俺たち全員、姫様と勇者様がここにいることは把握済みだったのです!」

僕はそこ等辺に落ちていた木の棒を拾い勝ち誇って笑う兵士の頭に一発殴る。

「!!」

「もうそれは良いです。というか結構です、なぜ把握していたのという詳細は後日じっくりと聞きましょうか。」

「いてて…姫様!暴力はよくないですよ!!」

「お黙りなさい。で、城で何があったのですか?」

「…話逸らしやがった。」

「何か言いましたか?」

そう言って僕は棒を構え兵士の額に突き出した。

「いいえ…なんでも。城の者が全員やられて、勇者様が誘拐されました。」

「え?何融解?勇者融けたんですか?」

「違います!!そんな見てられないような光景を俺が目撃したら若干トラウマになります!!そうじゃなくて!勇者様が、王子と勘違いされて連れ去られてしまったのです!!」

あのお人よしの事、きっと僕の犠牲になって行ったのでしょう。
まったく自分が女だと知らないで…剣なんてまだまだ未熟なはずなのに…。
僕だったら絶対逃げる。絶対。

「で、誰が勇者を連れ去ったのです…」

「知りません。」

僕が言い終わらないうちに答えた。僕はまた木の棒を兵士に向け口を開いた。

「僕にどうしろと言うのですか。」

兵士は、目をキラキラさせ「待っていました!!」と言うかのように答えた。

「どうか、勇者様を助けに行ってください!!武器ならここに…」

僕は木の棒を捨て兵士の持っている武器を無理矢理奪い取り、刃先を兵士に向けた。

「ひぃっ!何をするんですか!!」

「行けと…探せというのですか、この僕に。」

兵士は涙目で答えた。

「勇者様を助けに行ってください!」

「僕は…一国の王子です。あなたたちが行ったらどうですか?仮に兵士でしょう?」

そう言う僕に首を振って兵士は笑いながら答えた。
「俺たちでは無理でしたよ、全員やられてしまいましたもの!」

「…そうですか、では今あなたはここで死ぬべきです。」

そう言って兵士の背中に足蹴りを回し兵士はうつ伏せになった。
それを固定するかのように僕は背中に足を乗せた。

「ひ、姫様!ご冗談を!姫様は剣をお使いになったことがないでしょう!?」

「何を言ってるのですか、これでも僕は剣を持ったことがあるし振り回すこともできるのですよ?王子嘗めないでください。」

「本当でございますか!?また想像の。とかなんとかそういうのではないのですか!?」

「…死になさい。」

「ひひ、姫様!考え直してください!あなた様が勇者様を助けに行けばあなた様もまた勇者になれることを!!どうか考え直してくださいませ!!!」

兵士は必死に手を合わせて僕に縋り付くように言った。うつ伏せだけれど。
まぁ確かに先程まで勇者になりたいとは思いました、けれどあれとこれとはまた別の話。
ましてはたかが僕の護衛の一人や二人、何をされても僕には…
いや、関係があった。そういえば、この前隣町に美味しいパン屋があると言っていた。
パン好きの僕を思って勇者は隣町まで行ってきてくれたらしい、現に食べたパンは頬が落ちるほどの美味しさだった。
僕は少しため息をついてから兵士に乗せていた脚を地面へとおろし剣を下げた。

「で…食糧などはちゃんとあるのでしょう?」

「王子!行ってくれるのですか!?」

「他にいないのでしょう?というよりあなたは、僕を姫と呼ぶか王子と呼ぶかどっちかにしなさい。」

「では、姫様といいます!」

兵士は立ち上がって非常用バックを僕に渡した。

「もう少しましな物はなかったのですか…?」

「それしかなかったので、カンパンいっぱい入っているので大丈夫です。」

「…カンパンって…パン好きな僕でもそれは好きとは言えません。」

もう自棄になるしかなく僕は非常用バックを持ちまずは村に行くことにした。
この時すぐに小屋に引換してずっと本を読んでいればきっともっとうまくやれたはずなのに…。


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昔書いた小説をちょこちょこ変えて書いてみました。
なんだか日本語がおかしい…けど、まぁしょうがない!日本語知らないから!!←
読んでいて見苦しい物ですが、最後まで温かい目で見てくださると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。


2012.03.12
 


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