昼寝日和の午後。私はいつもの場所へ向かっていた。目的地は言うまでもないけれど一応幽霊船。ここに来るのも日常茶飯事で日課のようなもの。
アッシュはいつも「また来やがった…」なんて嫌そうな顔をして言うけれど、心を覗けば喜ぶアッシュに口が緩む。この前ついアッシュの心を覗いてしまった。それがきっかけでこの光景が毎日続くものだから楽しくて楽しくてしょうがない。簡単に言えば嵌まってしまったということ。
アッシュには前に勝手に人の心を見るな。とは言われている、確かにそれは最低なことだ。こんな風に言うのは失礼だけど、正直嬉しかった。だから本人の口から聞けたらなんて欲張りになってしまう。ため息をついて自分の欲を振りほどくように首を振りドアノブに手をかけた。

『アッシュ。』

無断で入るのに慣れてきたのか、「ノックしろ」と怒られない。さすがに呆れられたかな?
ふとアッシュを見れば机に置いてあるチェス盤と睨めっこをしていた。
近寄ってみると相手もなく一人で考え込んでいたらしい。

『どこにチェスなんかあったの?』

そう問えばアッシュは私の方を向かないでチェス盤を見たまま「漁ったら出てきた。」と素っ気ない返答をする。相手もいないで一人でずっとやっていたの?と考えれば心の奥で同情心が湧いた。

『良かったら相手になる。』

そう言うとアッシュは驚いたような目を向けて、ついでに「できんのか?」と挑発的な目線を私に送った。私だってチェスの一つはできる。何せ一度デビトのイシスレガーロで鍛えてもらったし。一応アッシュの相手くらいはできる。何にもできない子で見られたくないという気持ちを込めて睨むとアッシュはニヤリと口を歪ませた。

「んじゃあ、負けたら罰ゲームな。ま、どーせ?俺が勝つんだろうけどな。」

勝利の宣言をするアッシュに対抗してむっと眉をひそめる。やってみないと結果なんかわからない。
アッシュが勝っても私が勝っても別に大意はない。
そう考えれば少しは気が楽になった。

『罰ゲームは、お互い想ってることを全部言うこと。嘘はつかないで。』

一瞬文句を言いたげな顔をしたけれどすぐに承諾してくれた。そして当たり前だけど恋人たちの力の使用は禁止。とアッシュはルールを追加した。
ゲームが始まり最初の一手は私からだった。

―それから…何分経ったのだろう。この部屋には時計というものが見当たらないから少し時間感覚がなくなる。もしかしたら昼食の時間に間に合わなかったかもしれない。もっと言えば3時のティータイムにも間に合わなかったかもしれない。そう考えると何分どころではないと気づいた。まぁでも決着はつきそうかな。

『…アッ』

「…うるせぇ!今考えてんだ!話かけんな!!」

イライラしている不機嫌なアッシュ。ゲーム盤は私に勝利を示しているかのようだった。ぶつぶつ独り言を言うアッシュにじっと待つ私。
それを無限ループして一体何分経っているんだろう。さすがにちょっと疲れた。ため息をつきたくなったけどアッシュの集中を途切れさせないためにはグッと我慢をした。それに、これ以上不機嫌になってはこちらが嫌な思いをするだけだし…

「…!!ここだ!!」

何かを閃いたのか駒を進めるアッシュ。けど勝敗は目に見えていた。やっと生み出せた対策を踏みつける罪悪感に戸惑ったけれど本気でかからないと相手に失礼だ。どんなときでも勝負事には手を抜いてはいけない。だから、

『(ごめんね)…チェックメイト』

目に見えていた勝敗は何事もなく幕を閉じた。
アッシュの表情と言えばただ虎になった時と同じくらい真っ白だったことを覚えている。

『アッシュ、罰ゲーム。』

肝心な罰ゲームを逃がさないとアッシュの腕を掴んだ。それに無駄な抵抗はできないとわかったのか大人しくするアッシュ。 項垂れてるけど。
多分アッシュのことだから挑発的なことを言って言い逃れをすると思う。だからあまり最初からは期待しない。アッシュは項垂れたまま深いため息をついた。

「…最近幽霊船が明くるくなった、気がする。」

『え?』

それはどういうことだろう?確かに幽霊船は最初のころのどんよりとした雰囲気はなくなったけれど、明るくなったとは電球でも変えたからなのかな?疑問符を浮かべる私に気づいたのかアッシュは舌打ちをする。

「一々言わすんじゃねぇよ。バーカ。」

油断して腕を振りほどかれ今度は私の腕が掴まれる。アッシュの顔が近くに…!!
バランスを崩してベッドに座り込んでしまう。倒れないように掴まれてない手でなんとか身体を固定した。けれどアッシュはそんなのお構いなしに私の耳元まで顔を近づけた。

「お前のせいだぜ、イチゴ頭。お前のせいでいつも俺は乱される。」

吸い付くようなアッシュの台詞に、吐息が耳にかかって体温が一気に上昇する。気づけば私は追い込まれていた。これじゃあ罰ゲームなんかになりはしない。

「…なんだぁ?耳が一気にイチゴ色だな。弱ぇのか?」

攻め続けるアッシュに耐えられずに自然と脚に力を込めるものの、それに感ずかれて押し倒される。
攻撃の前に動転してしまい頭の混乱が招じた。
それを面白そうに口元を緩めるアッシュに睨み付ける。それが逆効果だったらしくアッシュは口元を歪めた。

「見てて飽きないぜ、なぁ?フェリチータ」










逆転罰ゲーム




チェス盤はひっくり返されて、私は見事に負けてしまった。これじゃあゲームの意味がない。次は絶対に勝って見せると決めた。




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これ以上書いたらR指定がつきなんだか卑猥な文章になるんじゃないかと気づき強制終了した私はチキンです。はい。

リクエストありがとうございました!!
リク通りに弄り倒されてますか…?
そして相変わらずアッシュくんがキャラ崩壊ですね\(^q^)/すみません。
一応甘です。(強調)

優芽様にはいつも拍手やご感想をいただけて><
本当にいつもいつも感謝しています!!ありがとうございます!
リクエストもすごくすごく嬉しかったです!!
本当にありがとうございます!!!!!


2013.03.09