残業帰り、何もかもを投げ出したい気分だった。
うちの上司は無理難題を俺に押し付ける。
まぁそれなりに対応はするが…正直きついのが今の現状。

早く帰って寝てぇ………。

最近じゃあまともに寝てねぇから視界に映る物が二重に見えてしょうがない。
人間毎日二時間睡眠を続けることは精神的にも負担になるらしい。
そりゃそうだよな…俺なんて24時間ずっと寝ていたい。
皮肉めいたため息をついてあいつがいる部屋に着く。

月子と同居してからもう三年くらいが経つ。
最初は恥ずかしさに絶えられなかったが、今はもうさすがに充分慣れて来た。
…それに、そろそろ…結婚なんてことを考えてたりする。
こういうのはなんつーか、改めて考えてみると気恥ずかしいもんだなと思ってしまう。

扉を開いて辺りを見回す。
部屋は暗闇で静寂さと虫の声が聞こえていた。
さすがに寝た、か。

今は午前0時。月子も明日は大学院の授業もあるだろうし、もう寝ただろう。
別にがっかりなんかしてない、ただこの静寂さが胸の奥に入り込んで何故だか孤独感に浸ってしまう。

「疲れてんなぁ…」

そう言ってリビングまで行きネクタイを緩めた。
その時パンっと高い爆発音が部屋に響いた。

「!!!」

驚きのあまり声が出なかった。
すると、電気が点いて一気に視界が眩しくなる。
目を擦ると目の前には満面の笑みをした月子がいた。

『お誕生日おめでとう!!隆文くん!!』

口が開いて唖然と立ちすくむ。
何だ…?何が起きてるんだ…………。

『まぁまぁ座って座って』

ソファーに座らされ、目の前のテーブルにはワインと小さなというか随分と歪な形をしたケーキが置いてあった。

冷静になって日付をみると、9月30日だ。
…今日俺の誕生日だったっけか…?

『作ってみたの!大丈夫。今回は毒味をしたから!!!』

そう言って月子はケーキにロウソクを指して火を灯す。それから誕生日には欠かせない歌を熱唱し、それからケーキを切り分けて皿に乗せた。

『食べて!』

命令形なのは気にしないようにしよう…。
皿を持ってフォークでスポンジを掬って口に運ぶ。

『どうかな?』

俺は黙って微笑んだ。
月子も黙って微笑む。
あぁ、なんて塩辛いんだ。このケーキ。
味見したんだよ…な…?

『良かった。これが一番美味しくできたの。』

前作はどれだけ酷くできてたんだ…。
疑問に思ったが聞いてはいけないと心のどこかで思った。

『それに、ね…一番最初にお祝い言えたのが私で良かったな。』

ニッコリ笑う月子にドキりと鼓動が高鳴る。
どうしたんだ…らしくない。

『隆文くん。』

ふと月子を見るとニッコリ微笑んで

『お誕生日おめでとう。心から愛してます。』

そういきなり言うもんだから何だか無性に顔が熱くなった。
































甘い告白をどうぞ



いきなり愛してるなんて言わないでいただきたい。
寿命が縮む。



おまけ



恥ずかしくなってうつ伏せになる。
よくまぁ容易く言えるな…。

『た、隆文くん?!どうしたの?いきなりうつ伏せになって…もしかしてケーキ?』

「いや……その何でもないです。」

『え、何?気になる』

「だから何でもねぇって」

『少しくらい教えてよ!』

「だぁっ…!もう見んな!」

『隆文くんー!』

「…ったく、」

『?』

避けるといつも突っかかってくるお前がいけねぇんだからな…。
キョトンとしているそのアホみたいな奴の口を塞いでやった。

『っ?!!』

案の定真っ赤になるこいつであって、俺もまた顔が赤くなる一方でなんだか、俺らって似てる所あるな…とか思ってしまう訳。
どうしようもねぇんだよ、愛が止まらねぇんだ。

「月子。」

唇を離し真っ赤になって涙目になったこいつの目を見る。

「俺も愛してる。」

また顔を伏せた。
俺には甘い言葉に関して学習能力はまだまだだった。






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お誕生日おめでとうぅぅぅうぅうぅ( 」>□<)」
ずっとずっとずっとこの先も愛してます^^
犬飼君に恋したのは高校一年生でした。今考えるとまだまだ短いですねw
PSP移植から始めて、summerで犬飼君の存在を知り、攻略できることを知り、いざ√に入ればもう撃ち殺されました。
今でもあのセリフを忘れられません。
全てはあのセリフから始まったようなものですね。
あのEDを何回見たことか…50は越えてますね。
犬飼君は私の全てであり、今じゃもうかけがえのない人です。これからもずっと愛してます((しつこい
犬飼君大好きです。これからもずっと愛させてください。



2012.9.30