『あ、雪だ。』

頬に冷たい感触がした。
空を見上げると上から雪が降り積もる。
隣にいた隆文くんも手にとって「さみーな」と言い繋いだ手を強く握ってきた。

『い、痛いよ。』

少し頬を赤らめながら隆文くんを睨む。

「構わないだろー?まぁ、月子がどーしても嫌なら離してもいいがな。」

口元をニヤリと歪ませて私を見る。

『うっ……まだ、…繋いでいたいです。』

俯き気味に言って、もう一度隆文くんは「さみーな」と言った。
いつか、私も隆文くんに仕返しをしたいと思ってたりする。
でもそんな仕返しなんてできるような考えが思いつかない。
うーん…と悩み始めると同時に隆文くんは真面目な口調で言った。

「よし今から花火やらねぇ?」

『え…?』

もしや隆文くん寒さで脳が凍っちゃったんじゃないかと頭をじっくりみた。

「おい、待て。なぜ頭の方に視線を向けるんだ。」

『隆文くん。大丈夫だよ、今なら保健室間に合うから。』

今日は星月先生いたし、まだ仕事中で起きてるかもしれない。

「あのな、俺はそこまでバカじゃないぞ?これでも頭は良い方で…」

隆文くんはハッと気がつき「いかん、いかん」と首を振る。

「この前の花火の余りが俺の部屋に余ってんだよ。処分するのに困っててよー。」とあの時の事を思い浮かべる。
四人で花火をやった時に宮地くんにバレて叱られたっけ、それで花火は責任を持って隆文くんが処分しろとか言われたんだよね。

「あの時は焦ったよなー、宮地は真面目すぎなんだ。」と口を尖らせて言った。

『でも今やったらあの時と同じような目になるんじゃないかな?』

だって他にやれる所とかなさそうだし…第一バレないとこなんてあるのかな…?

「いや、その心配はないぞ。」と笑顔を向けながら言う。
え、なんか嫌な予感がするんだけど…気のせいだよね。

恐る恐る私は『なんで?』と聞いた。

「夜中にやれば問題ないと思う。」

そんな真剣に言われても説得力がないよ…。
だ、大丈夫なのかな。
そんな不安な気持ちになりながらも食事と宿題を済まして裏庭にいく。
雪は少しだけ積もっていて足跡を残しながらサクサクと音をたてる。
花火の量はそんなになかった。
というより、線香花火だけ。
なるほど、確かにこれだけだったらバレる心配もない。

「よーし、そんじゃ火つけるぞー」とライターでろうそくに火を点した。
私は線香花火を持ち花火に火を点す。
すると花火はパチパチと小さな音をたて次第に大きくなっていった。

『綺麗…。』

少し寒いけど花火の光りはちょっとだけ眩しい。
隆文くんも隣で線香花火をつける。

「線香花火って地味だけど結構楽しいよな。」と優しく微笑んでいた。

そんな顔にときめきを感じる。
ふと目が合うとニヤリと隆文くんは笑って「今、俺に見とれてただろー」と言った。
私はそっぽを向く。

『花火に見とれてたんだもん。』

そんな言い訳が隆文くんに通じるとは思わない。
隆文くんは笑って嘘つけーなんて言って私をからかう。
そんな言葉を無視してどんどん線香花火の量が少なくなって行った。
いよいよ最後のニ本になった。

『じゃ、今から勝負ね。花火が落ちたら負け。それで、負けた方が勝った人の言う事を聞くってどう?』

隆文くんは有りがちな提案だな。と笑って勝負に参加した。
私の掛け声でスタートされ同じタイミングでパチパチと花火は音をたてる。
集中して線香花火をみていると隣にいた隆文くんはいきなり笑い出した。
私は驚いて『どうしたの?』と聞いた。

「あ?いや、なんか真剣になったお前の顔が意外と可愛いく見えてよ。」

なんのためらいもなく、自然に言うから顔が熱くなった。

『い、いきなり何言って…』

私が動揺して下を俯いたと同時に花火が落ちる。
隆文くんを見ると作戦がうまくいったというような顔をして「これで俺の勝ちだな。」と言った。
罰ゲームどうしようかなーと一人後片付けをしながら楽しそうにニヤニヤしている。

ごめん、隆文くん。
私この場から凄く逃げたい。
咄嗟に私は立ち上がり早歩き(もどき)で逃げた。

「あ、おい!!卑怯だぞー」

結構離れたと思ったのにすぐに追いつかれる。
咄嗟に腕を捕まれ振り向いたと思ったら雪に滑って転んでしまった。
隆文くんは私に覆いかぶさるようなそんな状態になってしまった。
あ、この状況は……
声を出そうと口をパクパクしていたら隆文くんに口で塞がれる。

『…っ』

あーもう隆文くんのペースにはまってしまった。
甘い口づけの後、隆文くんは私を起こして「帰るかー」と呟いた。
すると、ほらと手を指しのばされてぎゅっと握る。

『寒いね…』と今度は私から手を強く握った。





小さな結晶の幸せ魔法





今度は私から愛を重ねよう。
覚悟しててね、隆文くん。
雪が降るにつれて私達の足跡も沢山残った。








(罰ゲーム…どうするか)
(あんまり私が苦手そうな物はやめてね…?)
(あ?大丈夫だ。安心しろー、俺の部屋で何か歌ってもらうから)
(そっか、…えっ、ちょ、ちょっと待ってよ!!)
(大丈夫だ。誰でもわかるような簡単な曲にしてやるって)
(そ、そんな問題じゃないでしょっ!!)

その後私は何故かカエルの歌を歌わさせる羽目になった。
隆文くんのその時の様子はもう、思い出したくもない。






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長々しい文章をすいませんでした。
今日は雪が降ったのでその中で花火やったら楽しいんだろうなと思いつつ書いてみました。
ごめんなさい。
意味がわからない行為に土下座です。
すいません、萌えない愛をご覧戴き本当に感謝です。
ありがとうございました。


2011.02.11